野菜の栽培において、第二次世界大戦前はほとんどの農家が下肥を用いていた。戦後になって西洋野菜の普及とともに化学肥料を用いるようになった。下肥を用いると回虫卵など衛生面で問題があるが、化学肥料ではその心配がないことから、化学肥料を用いて栽培した野菜を清浄野菜とよぶようになった。しかし、衛生面を配慮したことよりもむしろ化学肥料への依存度の高い野菜としての意味合いが強く、手数などの経済性や栽培法の変化から、ほとんどの野菜に化学肥料が用いられ、実際には清浄野菜とよぶ必要性はなくなった。化学肥料の利用は、野菜の栽培法の変化にも大きく貢献した。土地を使わずに、肥料を溶かした水にプラスチック板を浮かべて、その上で野菜を育てる水耕栽培や、砂や砂利を土がわりに用い、肥料を含んだ水を流して栽培する礫耕(れっこう)栽培などがその代表である。さらに、ビニルハウスや品種改良を組み合わせ、野菜の栽培そのものがどんどん変化した。一方、化学肥料の普及に伴い、野菜の品質、とくに風味の低下や、地質の低下が問題になり、また、農薬や化学肥料自体が野菜の汚染につながるために堆肥(たいひ)などを用いた有機栽培が注目され、有機無農薬野菜が人体に安全な、また、自然環境を汚染しない食材として支持されるようになっている。
[河野友美・山口米子]
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