済口(読み)すみくち

精選版 日本国語大辞典 「済口」の意味・読み・例文・類語

すみ‐くち【済口】

〘名〙 (「すみぐち」とも)
① 事の終わるところ。終局点。結着。また、落着した事件。
※浮世草子・男色大鑑(1687)五「牛引とどめ駕籠をたて、往来の人更にまた山をなして、此済口(スミクチ)を見るはあやうかりし」
② 落ち着き先。勤め口。就職口。住口。
※浮世草子・当世乙女織(1706)三「此二つ櫛が済口(スミクチ)は給分の事みじんもかまはず」
③ 江戸時代、訴えが提起されたのち、原告被告との間で内済(ないさい)(=和解)が成立し、裁判所に訴えの取下げを願い出ること。紛争が終結したことを裁判所に通告すること。
※禁令考‐後集・第一・巻一〇・文化一三年(1816)六月日「相対之上議定を定、済口相成候儀を申立」
落語大工訴訟(1891)〈禽語楼小さん〉「『黙って居ろ』と請取を出すと、茲(ここ)で済口(スミグチ)を出さなければなりません」

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改訂新版 世界大百科事典 「済口」の意味・わかりやすい解説

済口 (すみくち)

江戸時代の民事裁判手続(出入筋(でいりすじ))において,和解(内済(ないさい))が成立すること。民事事件(公事(くじ),出入物)では奉行所は終始内済を勧めるのであって,裁判のどの段階においても内済することが可能である。親類,町村役人のほか,寺院や公事宿(くじやど)(訴訟関係者の宿泊する宿屋で,主人・下代は弁護士類似の役割を果たす)などが仲介者(噯人(あつかいにん)・扱人)となるのが通常であった。熟談のうえ解決策がまとまると,その内容を記した〈済口証文(内済証文)〉を奉行所に提出して承認を求める。この場合,〈本公事(ほんくじ)〉では原則として原告(訴訟人)・被告(相手方双方が連印して申し立てなければならないが,内済による解決がとくに強く奨励された〈金公事(かねくじ)〉では,訴訟人だけの申立てで足りる(片済口(かたすみくち))。奉行所の承認(済口聞届(すみくちききとどけ))は,判決裁許さいきよ))のときと同じく奉行自身が法廷白州(しらす))に出座して申し渡すのであり,これによって内済の内容は裁許と同様の効力を与えられた。
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世界大百科事典(旧版)内の済口の言及

【内済】より

…とくに江戸時代,和解することをいう。広義には裁判外の示談も内済というが,裁判上の内済は,奉行所の承認手続(済口聞届(すみくちききとどけ))を経ることによって判決(裁許(さいきよ))と同様の効力が与えられる。民事裁判手続(出入筋(でいりすじ))においては,公権的・法規的裁断である裁許よりも,両当事者の互譲によって具体的合意を導く内済のほうが,紛争解決の原則的方法として奨励された。…

※「済口」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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