白州(読み)シラス

デジタル大辞泉 「白州」の意味・読み・例文・類語

しら‐す【白州/白×洲】

白い砂の州。
邸宅の玄関先庭園などで、白い砂や小石の敷いてある所。
能舞台観客席との間の、砂利を敷きつめた所。
《庭に白い砂利が敷かれていたところから》江戸時代奉行所の裁きを受ける庶民が控えた場所。また転じて、奉行所・法廷。おしらす。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「白州」の意味・読み・例文・類語

しら‐す【白州・白洲】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 白い砂の州。白砂の干潟(ひがた)。白い砂。
    1. [初出の実例]「難波潟潮干ば群れて出たたんしらすの崎の小貝拾ひに」(出典:山家集(12C後)下)
  3. 特に、穢(けがれ)を封ずる目的でまかれた白い砂。また、その白い砂がまかれたところ。
    1. [初出の実例]「当社大明神へ西切兵庫入道道幸、社参百度詣を致也。御殿の白洲(シラス)に長床をしき、心をすます処に」(出典:本福寺跡書(1560頃))
  4. 邸宅の庭に白砂を敷いた所。白砂を敷いた庭園。〔作庭記(1040頃か)〕
  5. 邸宅の玄関の前に白砂を敷いた所。転じて、玄関前。
    1. [初出の実例]「右筆は白洲に伺候致す」(出典:鎌倉殿中以下年中行事(1454か)正月一七日)
  6. 能舞台と観覧所との間の、小石を敷きつめた所。
    1. [初出の実例]「作は赤鶴、中より、二つにわれたるをつぎし面をくだされ、御しらすにていただき申さるる時、御詞に、其面をきて」(出典:わらんべ草(1660)五)
  7. ( 白い砂が敷かれていたところからいう ) 江戸時代、奉行所の法廷の一部。当時は身分により出廷者の座席に段階が設けられており、ここは百姓、町人をはじめ町医師、足軽、中間、浪人などが着席した最下等の場所。砂利(じゃり)
    1. [初出の実例]「夜中同じ事を百たびもおしへて又其朝もいひ聞せて両方御白洲(シラス)に出ける」(出典:浮世草子・本朝桜陰比事(1689)四)
  8. ( から転じて ) 訴訟を裁断したり、罪人を取り調べたりした所。奉行所。裁判所。法廷。
    1. [初出の実例]「さやうの事は、此奏者はぐどんな者で、申上る事はならぬほどに、汝らが、お白砂(シラス)へまいって直に申上い」(出典:虎明本狂言・昆布柿(室町末‐近世初))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「白州」の意味・わかりやすい解説

白州(山梨県)
はくしゅう

山梨県北西部、北巨摩郡(きたこまぐん)にあった旧町名(白州町(まち))。現在は北杜(ほくと)市の西部を占める一地区。1955年(昭和30)鳳来(ほうらい)、菅原(すがわら)の2村、および長坂町の一部、駒城(こまき)村の一部が合併して町制改称。2004年(平成16)須玉(すたま)町、高根(たかね)町、長坂(ながさか)町、明野(あけの)村、大泉(おおいずみ)村、武川(むかわ)村と合併、市制施行して北杜市となる。旧町域は、北西は釜無(かまなし)川に沿って長野県と接し、南は甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)の山頂に至る。釜無川沿いに信州往還(国道20号)が走り、かつては宿駅として栄えた。尾白川(おじろがわ)流域は良質の米の産地として知られるが、ブドウや野菜・花卉(かき)栽培も取り入れている。駒ヶ岳登山の基地で、山頂に駒ヶ岳神社があり、また尾白川渓谷は景勝地である。ほかに塩沢温泉、自然公園、キャンプ場などがある。1973年には良質の水を求めてサントリーのウイスキー工場が鳥原(とりはら)地区に建設され、日向(ひなた)山山麓(ろく)に多くの貯蔵庫がつくられた。このサントリー白州蒸溜所は広大な敷地をもち、ウイスキー博物館やバード・サンクチュアリがある。

横田忠夫

『『白州町誌』(1986・白州町)』



白州(法廷)
しらす

江戸時代、奉行所(ぶぎょうしょ)や代官所に設けられた法廷。被疑者の庶民が座る庭に砂利が敷いてあり、その砂利の白さから白州とよばれた。奉行は庭に面して最上段に座り、次の間に吟味役、書役(かきやく)、見習与力が並び、庭には警戒の突這(つくばい)同心が控えていた。砂利の上に座るのは、被尋問者が庶民の場合だけで、浪人および特別の町人は板縁の上に座った。審理、断罪は奉行の仕事だが、中間の取調べは担当与力が吟味部屋で行い、奉行が白州へ顔を出すのは、人定尋問と判決言渡しのほか一度ぐらいであった。この判決の申渡しを落着(らくちゃく)という。入牢(にゅうろう)の申渡しは奉行のみに与えられた権限なので、重い犯罪者のいるときは夜中でも白州を開いたという。

稲垣史生

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「白州」の意味・わかりやすい解説

白州[町]【はくしゅう】

山梨県北西部,北巨摩(きたこま)郡の旧町。大部分は赤石山脈北部の山地。主集落は釜無(かまなし)川右岸にあり国道20号線が縦貫。米作,畜産,野菜栽培,ブドウなどの果樹栽培が行われる。西部は南アルプス国立公園に属する。駒ヶ岳(甲斐駒)の登山口。2004年11月北巨摩郡須玉町,高根町,長坂町,明野村,大泉村,武川村と合併し市制,北杜市となる。138.02km2。4373人(2003)。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「白州」の意味・わかりやすい解説

白州
はくしゅう

山梨県北西部,北杜市西部の旧町域。駒ヶ岳の北東斜面を占める。 1955年長坂町の一部と駒城村の一部,鳳来村,菅原村とが合体して白州町が成立。 2004年明野村,須玉町,高根町,長坂町,大泉村,武川村と合体して北杜市となった。地名は大小の河川が多く,そこから流出した白砂の形成した白州にちなむ。山麓を流れる釜無川沿いの低地で米作が行なわれ,果樹,野菜の栽培も取り入れられている。山麓の松原にはウイスキー工場がある。中心地区の白須は駒ヶ岳の登山口。南アルプス国立公園南アルプス巨摩県立自然公園に属する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「白州」の意味・わかりやすい解説

白州 (はくしゅう)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android