本公事(読み)ホンクジ

デジタル大辞泉 「本公事」の意味・読み・例文・類語

ほん‐くじ【本公事】

江戸時代金公事かねくじ以外の訴訟

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精選版 日本国語大辞典 「本公事」の意味・読み・例文・類語

ほん‐くじ【本公事】

  1. 〘 名詞 〙 江戸時代、金公事(かねくじ)以外の公事(訴訟)のこと。金公事が、特別な訴訟手続および執行方法がとられたのに対し、普通の方法で裁判が行なわれた本来の公事をいう。領地作徳(さくとく)預金、買預米、給金などの訴えが含まれた。〔禁令考‐後集・第二・巻一五・文化一二年(1815)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「本公事」の意味・わかりやすい解説

本公事 (ほんくじ)

江戸幕府法上,民事訴訟手続出入筋(でいりすじ))で裁判される訴訟事件(出入物(でいりもの),公事)のうち,金公事(かねくじ)に対する通常訴訟事件の総称。また,その訴訟手続。金公事(借金銀,売掛金などおもに利息付・無担保の金銭債権に関する訴訟)以外の出入物はすべて本公事であって,本公事のほうが訴訟手続上債権の保護に厚いが,ほかに仲間事(なかまごと)という裁判上まったく保護されない債権関係も存した。質地,家質(かじち),小作滞(とどこおり),買預米,為替金,両替金,預金,奉公人給金,夜具滞,店立(たなだて)など,無利息または物的担保を伴う金銭債権や物の引渡しなどに関する給付訴訟,地境論(境相論),用水論水論),山論秣場(まぐさば),新田,川除(かわよけ),婚姻離縁養子,家督,座席,役儀など,土地や身分などに関連する確認・形成訴訟的なもののほか,不法,人殺,疵付(きずつけ),密通,強淫などの可罰的事案が,吟味筋(ぎんみすじ)(刑事裁判手続)ではなく出入筋で裁判される場合も,本公事である。出入筋においては一般に和解内済(ないさい))による紛争解決が奨励され,金公事はとくにその傾向が強いが,本公事でも地境論,水論などの〈論所〉では内済を強く勧め,そのための特別な手続も定められていた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「本公事」の意味・わかりやすい解説

本公事
ほんくじ

江戸幕府の出入物 (公事) についての訴訟取扱い上の区分。元来は一本化されていたが,元禄期 (1688~1704) 前後より利息付き金銭債権 (→金公事〈かねくじ〉) にかかわる訴訟が増大してきたため,これと区別してそれ以外の訴訟を本公事と呼んで取扱うようになった。そのおもなものとしては,時期により部分的に変化はあるが,質地,作徳,買預米,預金,給金,譲金,家賃,敷金,引負金,両替金,為替金,小作滞,家蔵など売渡し金のほか,密通,強淫,打擲などがある。幕府訴訟法上本公事が本来のものであることはいうまでもない。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「本公事」の解説

本公事
ほんくじ

江戸時代,出入筋の手続きによって争われた私人相互の争いのうち,金(かね)公事を除くすべてのもの。または,その民事訴訟手続き。山論・水論・地境論などの論所,家格・席順など身分をめぐる争いや家督・相続をめぐる争い,質地・家質などの担保つき債権もしくは無利子債権を対象とした争いなど,内容は多岐にわたる。本公事の裁許結果は,人・物について,秩序の確認や新たな形成をともない,人々の生活に与える影響も大きかったので,金公事に比べて公権力の関与が強く,訴権の保護も厚かった。

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世界大百科事典(旧版)内の本公事の言及

【相対済令】より

…江戸時代,債権・債務など私権にもとづく訴訟にたいする幕府の扱いは,その種類によって差異があった。いまそれらを訴権(訴訟請求権)の強弱によって分けると,(1)仲間事,(2)金公事,(3)本公事となる。(1)は共同出資による利潤配分に関するもので,訴権なしとされた。…

【裁判】より

…子が親を,従者が主人を訴えることは原則として禁止された。出入筋には,その対象により本公事(ほんくじ),金公事(かねくじ)の別があり,ほかに仲間事(なかまごと)と称する一種の請求がある。金公事は利息付無担保の金銭債権の争いで,本公事はその他の身分,地所,用水,家督,質地,家質(かじち),為替,小作人,奉公人,借地借家,村法違反等で,金公事が当事者間の給付の問題であるのに対し,人および物に対する秩序の形成,確認を伴い,官憲が介入する必要度が高い。…

※「本公事」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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