地球上の温帯地方にみられる気候の総称。一般的に温和で、多くの場合適量の降水に恵まれ、四季の別が明瞭(めいりょう)に現れる。年降水量は500~2000ミリメートル程度で、生産力に富み、稠密(ちゅうみつ)な人口を支え、多くは文化や経済の中心地域となっている。アメリカの気候学者ハンティントンEllsworth Huntington(1876―1947)は、その著書『気候と文明』のなかで、人間生活に適度の刺激を与えるもっとも活動能率の高い気候であると説いた。
温帯気候地域の森林は、北半球においては、南方では常緑の広葉樹が多く、北方では針葉樹が増加する。落葉しても成長を休止する期間がほとんどみられないのは、冬の寒さや夏の乾燥が極端でないからである。日本では北海道を除き大部分が温帯気候に属する。日本海側の冬の多雪は温帯気候ではむしろ珍しいほうで、一般に地面が凍結したり、長い積雪期間をもたないのが通例である。夏の気温はかなり高く、米、ワタなどの熱帯性作物をはじめ、大麦、小麦、ブドウ、オレンジ、それに野菜や花卉(かき)が栽培される。降水は一般には前線と温帯低気圧によるものが多く、大陸東岸では熱帯低気圧が台風やハリケーンに成長して襲来する。温帯気候は、西ヨーロッパ、東アジア、北アメリカ東部、アルゼンチン、オーストラリア東部などに広がり、地球上の約27%を占める。
温帯気候は、雨の降り方やその季節的配分によって、植生等の景観が著しく異なるので、これと関連して、ケッペンは、温帯多雨気候(温暖湿潤気候と西岸海洋性気候)、冬に乾期が現れる温帯夏雨気候(なつあめきこう)(温暖冬季少雨気候)、夏に乾期が現れる温帯冬雨気候(ふゆあめきこう)(地中海性気候)に細分した。このほか、東アジアなどに顕著な季節風の影響の強い温帯季節風気候(温帯モンスーン気候)などが加えられる。
[小林 望・福岡義隆]
『E・ハンチントン著、間崎万里訳『気候と文明』(岩波文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また同じ海洋に面した地域でも,大陸の東岸は西岸と比べて気温の年較差が大きく,夏は高温,冬は低温で,いわゆる東岸気候,西岸気候のちがいがみられる。ケッペンは,最寒月18℃の等温線によって熱帯気候と温帯気候を区分し,最寒月の平均気温18℃以下-3℃以上を温帯気候,最暖月の平均気温10℃以上で最寒月の平均気温-3℃以下を亜寒帯気候,最暖月の平均気温10℃未満を寒帯気候とした。このように気温は年平均をみるだけでなく,最暖月と最寒月の気温も重要である。…
※「温帯気候」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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