潜在構造分析(読み)せんざいこうぞうぶんせき(その他表記)latent structure analysis

改訂新版 世界大百科事典 「潜在構造分析」の意味・わかりやすい解説

潜在構造分析 (せんざいこうぞうぶんせき)
latent structure analysis

一つの集団に対して,個人個人のとる態度や行動をいくつかの質問項目によって調査し,その結果から集団内に潜在する下位集団潜在クラス)を探り出そうとする統計的データ解析手法潜在クラス分析ということもある。因子分析知能検査知能の分析から発展したように,潜在構造分析は態度測定を目的とする心理学分野で考案され,1950年代から発達してきた。大変魅力的な手法ではあるが,データを単に説明しデータに適合するというだけでは種々の定式化が可能な場合が多く,潜在するとみなされるクラスが真に意味があるかどうかは十分な検証を行う必要がある。70年代にはさらに広いモデルの研究が進み,行動諸科学,市場調査等への応用の可能性もひろがっている。

 調査項目の一例は次のようなものである。ある地域の住民を対象とし,各質問には“はい”か“いいえ”で答える。(A)近所との付き合い方に満足していますか。(B)この地区での暮しは安全ですか。(C)教育の環境はよいと思いますか。(D)通勤不便を感じていますか。質問が4件のとき,答えの組合せは,2×2×2×2の16とおりであるが,その該当数をfijklijkl=1,2),総数nとする。“はい”が1,“いいえ”が2に対応する。そのとき,という形に書けると仮定して,パラメーターを推定する。ここで,mが潜在クラスの個数,潜在クラスtt=1,……,m)に属する人の比率pt,各クラスtで各質問に“はい”と答える確率“いいえ”と答える確率をとしている。いいかえれば,潜在クラス内では質問への応答相互独立であると仮定している。これが潜在構造分析の特徴である。これによって,下位集団が抽出できれば,集団の態度分析だけでなく,重点的な施策立案などに役立たせることができる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「潜在構造分析」の意味・わかりやすい解説

潜在構造分析
せんざいこうぞうぶんせき
latent structure analysis

態度測定に際して質問項目間の関係を分析するための理論の一つで,P.F.ラザースフェルドによって提唱された。これは,態度を反応の一貫性の徴候群として操作的に定義する。反応の一貫性ということは,態度を知るのに用いられる顕在的項目が相互に相関し合っていることを意味し,事実,項目間の相互関係性が態度を規定するのである。態度変数は,こうした一貫性から把握するため,項目は潜在的変数のゆえに相互に関係するという推論を立てる。潜在的変数が常に常数として保たれるならば項目は独立として扱う。これが潜在構造分析の基本である。

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