神聖なる火を相続すること。出雲国造(いずものくにのみやつこ)家では古来新国造の就任にあたって必ず火継神事を行った。元来,これは意宇(おう)郡の熊野大社で行われたが,中世以降,もと国造の居館近くの斎場であった神魂(かもす)神社(松江市大庭)で行われるようになった。国造家の始祖天穂日(あめのほひ)命以来とされる古式神事で,まず神伝の重宝である火燧臼と火燧杵を用いて神火を鑽(き)り出し,この浄火をもって斎食を炊(かし)ぎ,熊野大神,大国主神をはじめ国内の諸神に供し,新国造みずからも食し,初めてその職を襲ぐことができる。この火は斎火殿(通称火所)に貯えた。皇室でも皇太子を〈ヒツギノミコ〉と称し普通は〈日嗣御子〉と解されるが,火継との関連が注目される。
→出雲国造
執筆者:茂木 貞純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
聖火の継承。発火技術の幼稚な時代には、調理や採暖のための火種がつねに保存されたが、時代が進んだのちも宗教とのかかわりを保ちながら、聖火の継承を行うことがあった。古代ギリシア、ローマ、インド、中国などにその例がある。日本でも長野市善光寺には創建以来消されたことがないという常夜灯があるが、もっとも有名なものは島根県の出雲(いずも)大社の火継神事であろう。この神社の宮司職は出雲国造(こくそう)と称し、就任の儀式には、宝物の火鑽杵(ひきりぎね)・火鑽臼(うす)で鑽(き)った神火で一夜酒(ひとよざけ)と御飯を用意し、神々とともにこれを食べて、神々の霊威を受ける。国造邸のお火所には常時神火が焚(た)かれ、1872年(明治5)までは国造はこれ以外の火を使った食物をいっさい食べてはならなかった。
[平井直房]
『フュステル・ド・クーランジュ著、田辺貞之助訳『古代都市』(1956・白水社)』
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