炭化ケイ素(読み)たんかけいそ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「炭化ケイ素」の意味・わかりやすい解説

炭化ケイ素
たんかけいそ
silicon carbide

炭素ケイ素の化合物。シリコンカーバイドともいう。1891年アメリカのE・G・アチソンダイヤモンドを得ようと、粘土コークスの混合物を炭素弧光(アーク)灯で熱したとき、きらきらする物質をみつけ、これを炭素とコランダムアルミナ)の化合物と思いカーボランダムCarborundum(商品名)と命名しカーボランダム社が設立され、工業的に製造されるようになった(1892)。

 珪石(けいせき)SiO2とコークスを電気炉で2400℃ぐらいに溶融し冷却すると微細結晶の集合体が得られるので、これを砕いて使用する。多くα(アルファ)型が得られる。ケイ素とカーボンブラックをアルゴン気流中1800℃に熱するとβ(ベータ)型が得られる。その他多くの変態が得られている。純粋なものは、無色、六方晶系(高温安定型)に属し、屈折率が2.65と大きいので大きな結晶は鏡のように輝く。不純物(アルミニウムマグネシウム、カルシウム、黒鉛、ケイ素の単体など)により青色、灰色黒色となる。工業製品は多くが青黒色で化学的に不活性で、1000℃以下で酸素と反応しない。純粋なものは本質的な半導体。ダイヤモンドに次ぐ硬さをもち、モース硬さ9.5。研摩材として、砥石(といし)、研摩布紙などに用いられるほか耐熱性耐食性があり、強度、安定性に優れ特殊耐火物、化学反応器や電気抵抗体などにも用いられる。純粋なβ型はトランジスタ、ダイオード、発光ダイオードなどに用いられる。

[守永健一・中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「炭化ケイ素」の解説

炭化ケイ素
タンカケイソ
silicon carbide

SiC(40.10).19世紀末から工業化され,同名の会社の商品名カーボランダムで知られている.天然にもモアッサナイト[CAS 12125-94-9]として存在する.1905年にH. Moissann(モアッサン)がアリゾナ州でいん石中に発見した.一方の原子のまわりに他方の原子が四面体型に配置された層構造の積み重ねの繰り返しパターンの違いで,200種類以上の変態が存在する.基本的には六方晶系,りょう面体格子の多数の変形からなるα型と立方晶系のβ型に分類される.無色の結晶であるが,純度に応じて淡黄色から黒色のものまである.工業的には,19世紀末以来の古典的方法で,けい石とコークスを電気炉で2100 ℃ 以上に加熱すると,α型SiC粉末が得られる.ハロゲン化ケイ素と炭化水素混合気体の熱分解でβ型が得られる.高純度品はCVD法による.工業量産製品は普通,青黒い色をしていて,ダイヤモンドについで硬く,モース硬さ9.5.2800 ℃ 以上で熱分解する.化学的に不活性で,水,酸,アルカリに不溶.王水,熱濃硝酸にも侵されない.H2,N2,COなどと反応しない.空気中では600 ℃ 付近からSiO2保護膜ができるが,さらに高温では O2 が保護膜中を浸透して酸化される.Cl2 とは,800 ℃ 以上で反応してSiCl4とCになる.酸化性のアルカリ溶融には侵される.耐食,耐熱性が大きく,強度,硬さも大きいことから,耐熱材,高温構造材(ディーゼル用排ガスフィルターなど),耐食材,耐摩耗材,研磨剤などとして用いられる.ワイドバンドギャップ半導体として,高効率のパワートランジスター,高周波素子などとしての利用がある.[CAS 409-21-2]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「炭化ケイ素」の意味・わかりやすい解説

炭化ケイ素
たんかケイそ
silicon carbide

化学式 SiC 。コークスとケイ砂を電気炉で加熱して製造する。通称のカーボランダムはかつての商品名。緑色ないし青黒色の結晶。硬度 9.5でダイヤモンド,炭化ホウ素に次いで硬い。融点 2700℃以上,約 2200℃で昇華が始まる。化学的には安定な物質で,研磨材として広く用いられるほか,耐火材料,舗装道路の滑り止め,半導体などとしての用途がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android