アルミナ(その他表記)alumina

翻訳|alumina

精選版 日本国語大辞典 「アルミナ」の意味・読み・例文・類語

アルミナ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] alumina )[ 異表記 ] アリュミナ アルミニウムの酸化物。アルミニウムの製造原料。耐火剤、研磨剤、吸着剤、触媒、耐食性磁器などに用いられる。礬土(ばんど)。酸化アルミニウム。
    1. [初出の実例]「元来アリュミニウムはアリュミナの元質にして」(出典:西洋雑誌‐一(1867)新銀并にアリュミニウムと名くる金属の説)

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改訂新版 世界大百科事典 「アルミナ」の意味・わかりやすい解説

アルミナ
alumina

アルミニウムの酸化物Al2O3で,酸化アルミニウムともいう。α型(三方晶系),β型(六方晶系),γ型(等軸晶系)があり,高温ではα型が安定である。工業的には,ボーキサイトなどのアルミナ鉱石から,1888年にオーストリアバイヤーKarl Josef Bayerによって発明されたバイヤー法により製造するのが普通である。天然のアルミナ結晶にはコランダム(鋼玉)があり,その純粋で美しく着色したルビーやサファイアなどは宝石に使われる。着色は微量に含まれる重金属によるものである。

工業的なアルミナの原料には,Al2O3・3H2OまたはAl2O3・2H2Oを主成分とするボーキサイト,もしくはAl2O3・H2Oを主とするバン土ケツ岩がある。バイヤー法では,ボーキサイトを原料とし,濃水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)NaOH溶液を加えて常圧または加圧下で加熱しアルミン酸ナトリウムNaAlO2として溶かし出す。不純物の二酸化ケイ素,酸化鉄,酸化チタンは溶けずに残るので,これをろ過して除き,ろ液を放置すると,加水分解して水酸化アルミニウムAl(OH)3が析出する。微量不純物であるリン,バナジウムガリウムなどは,この析出の際に溶液中に残り,分離される。析出した水酸化アルミニウム(白泥)は脱水,乾燥したのち,回転炉などにより1200℃以上の高温で焼成してα-アルミナとする。バイヤー法アルミナにはナトリウム分がNa2O換算で0.35~0.7%程度含まれる。

 高純度アルミナの製造には,炭酸塩,硫酸塩,塩化物,硝酸塩などからアルミニウム化合物を析出させたり,金属アルミニウム微粉を酸化させたりする方法がある。また,高純度の金属アルミニウム棒を純水中で火花放電して得られる水酸化アルミニウムを1300℃付近で焼成して高純度のα-アルミナをつくる方法もある。

水酸化アルミニウムはアルミニウム塩類や顔料の原料となる。アルミナは,主として電解アルミニウムの製造原料に使われるが,そのままの形か電融して結晶を大きく成長させて研磨材としたり,アルミナ磁器の製造原料としても用いられる。研磨材にはアルミナ鉱物を直接電融精製してつくる方法もある。アルミナ質研磨材は目的に応じて,Al2O3の純度の異なるもの,酸化チタン(Ⅳ) TiO2酸化クロム(Ⅲ) Cr2O3などを固溶したものなど,特性の異なるものが種々つくられている。アルミナ磁器は,その電気絶縁性,硬質性,耐摩耗性,生体機能などを利用して各種用途に利用される。熱分解性のアルミニウム塩類を加熱分解して得られるγ-アルミナ(活性アルミナ)は,結晶粒径の非常に小さなもので,表面積が大きく,化学的にも安定であり,触媒,触媒担体,吸着剤などに用いられる。火炎溶融法ベルヌーイ法),水熱法,引上げ法などによってつくられた単結晶アルミナは,人造宝石,ルビーレーザー用ロッド,集積回路基板などに使われる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルミナ」の意味・わかりやすい解説

アルミナ
あるみな
alumina

酸化アルミニウムの工業的、鉱物学的名称で、酸素、ケイ素に次いで地殻中に多く存在するアルミニウムのもっとも安定で普通の存在形態である。

[阿座上竹四]

性質

化学式はAl2O3で、分子量は101.96であるが、加熱による変態がある。ボーキサイト、水酸化アルミニウムなどを500℃に加熱すると、脱水してまずγ(ガンマ)アルミナとなり、さらに1000℃以上に加熱するとα(アルファ)アルミナが得られる。γアルミナは結晶構造が粗く、水をよく吸収し、両性化合物であるため、酸、アルカリのいずれにも溶解しやすい。活性アルミナもγ型であるが、非結晶性多孔質で表面積が非常に大きいので吸着力が強い。天然に産するコランダム(鋼玉(こうぎょく))はαアルミナで、これに酸化クロムCr2O3を0.2%くらい含むものがルビー(紅玉)、また酸化チタンTiO2と酸化鉄(Ⅲ)Fe2O3をそれぞれ0.1~0.2%含むものがサファイア(青玉)で、いずれも不純ながら透明である。これらは鉱物中ではダイヤモンドに次いで硬く、モース硬度は9である。αアルミナは密な結晶構造をもつため硬く、融点2050℃、密度4.0、水に不溶で酸にも溶けにくい。高温で融解すると耐熱性を著しく増す。

[阿座上竹四]

製法

アルミニウムの鉱石は種類が多く、アルミナの製法も多様であるが、代表的なものはボーキサイトを原料としたバイヤー法である。これは1888年オーストリアのバイヤーK. J. Bayerの考案によるもので、アルミニウム鉱石をまずカ性ソーダに溶解してアルミン酸ソーダNaAlO2とし、不要な鉄やケイ酸は残渣(ざんさ)(赤泥)に残す。溶解液から赤泥を分離したのち、析出槽で種子として水酸化アルミニウム結晶を加え、水酸化アルミニウムを析出させる。ついでこれを流動焼成炉で焼成して純度の高いαアルミナとする。

[阿座上竹四]

用途

工業的にもっとも多量に用いられるのは、バイヤー法で製造したアルミナをアルミニウム製錬の原料として使用するものである。吸着能力の大きい活性アルミナは脱水剤や脱色剤、クロマトグラフの吸着剤などに用いられる。天然産コランダムは金剛砂(こんごうしゃ)ともよばれ、不純な人造物(アランダム)とともに研削・研磨剤に用いる。ルビーやサファイアは宝石としての用途のほか、人工的にも製造され、時計の軸受や線引き用ダイスとして使われるほか、レーザーにも用いられる。アルミナはまた耐熱セラミックスの一つとして耐熱容器・器具材料として用いられるほか、広く耐火・耐熱工業材料として使用される。そのほか加工技術の進歩によりアルミナファイバー、アルミナバイト、透明アルミナなどもつくられるようになった。さらに陽極酸化皮膜はその多孔性を利用して種々の物質を充填(じゅうてん)し、電気、光学、磁性、潤滑、触媒、調湿、印刷など多様な機能的用途が開けつつある。

[阿座上竹四]

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百科事典マイペディア 「アルミナ」の意味・わかりやすい解説

アルミナ

化学式はAl2O3酸化アルミニウムの俗称。天然にはルビーサファイアコランダムなどとして産する。工業的にはボーキサイトからバイヤー法によりつくる。アルミニウムの電解精錬用原料とするほか,人造宝石,研磨材,アルミナ磁器,吸着剤などに使用。脱水・解離反応の触媒となるほか,金属触媒の担体としても有用。ファインセラミックスとして加工したものは,硬度・耐熱性にすぐれている。
→関連項目アルミニウムエレクトロセラミックス接触分解セラミック工具セラミックス断熱煉瓦ニューセラミックス

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知恵蔵 「アルミナ」の解説

アルミナ

酸化アルミニウムのこと。資源的に豊富な天然ボーキサイトから抽出精製する。高融点で化学的に安定かつ高い熱伝導性と電気絶縁性を持つため、ファインセラミックスのもっとも基本的な素材として、絶縁碍子(がいし)、IC基板、研磨剤、人工歯材など広い応用がある。ルビーやサファイアも着色不純金属元素を含んだアルミナ単結晶の一種。

(徳田昌則 東北大学名誉教授 / 2007年)

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栄養・生化学辞典 「アルミナ」の解説

アルミナ

 酸化アルミニウムAl2O3 (mw101.96).吸着剤,乾燥剤などとして使う.またニューセラミックスの原料になる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルミナ」の意味・わかりやすい解説

アルミナ

「酸化アルミニウム」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のアルミナの言及

【シリア】より

…前333),それ以後シリアはギリシア人の支配下に置かれた。すでに前800年ころまでに,オロンテス川の河口(アル・ミナAl Mina)にキプロス人,ギリシア人の貿易拠点が設立されていた。この港湾都市はギリシアと西アジアを結びつける窓口として,東方様式時代のギリシア文化に重要な役割を果たしたと思われる。…

【酸化アルミニウム】より

…化学式Al2O3。アルミナという慣用名が広く使われている。いくつかの変態が存在するが,すべて白色の固体で水に難溶である。…

※「アルミナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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