特定の支持政党を持たない有権者の集団。選挙のたびに投票先を変えるとされる。1990年代の東京都知事選、大阪府知事選で起きた「青島・ノック現象」で注目を集めた。2005年の郵政選挙や09年の政権交代選挙でも投票率を押し上げ、選挙結果を左右した。共同通信の世論調査では「支持する政党はない」に分類され、最近では全体の30%超を占める。
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支持する政党や好きな政党を持たない人々。「政党支持なし層」ともよばれる。このような無党派層は、これまでも常に一定の層として存在してきた(伝統的無党派層)が、1990年代に入ってからの無党派層(新無党派層)には、それ以前とは異なった特徴がある。第一には、伝統的無党派層が政治について多くの情報や知識をもたず、選挙への関心も低かったのに対して、新無党派層は政治に関する情報や知識が豊富で、選挙への関心も低くはないという点である。第二に、伝統的無党派層がつねに一定の層をなしながら緩やかに増大してきたのに対して、新無党派層は90年代に入ってから急速に増えてきており、投票率低下の大きな要因となっているという点である。第三に、新無党派層は候補者や争点のあり方に敏感に反応し、候補者や争点次第で投票態度を変える可能性を秘めているという点である。
このように、1990年代に新たに増大した無党派層は、単純な政治的無関心派ではない。政治に関心をもちつつも、そのような関心や期待に応えてくれる政党や政治家をみいだせず、無力感と政治不信を深めている人々である。また、絶え間ない新党の結成や政党の再編に対応できず、支持政党を失ってしまった人々も含まれている。したがって、問題は新たに生じた無党派層にあるよりも、これらの人々を置き去りにしたり、信頼を損ねてしまったりした政党の側にこそある。これらの人々が政党と選挙を拒絶しているのは、適切な選択肢を提起する政党が見当たらないためであり、選ぼうとする有権者の意欲と、選ばれる側の政党がかみ合わないためである。もし、適切な候補者や政党が現れれば、この新無党派層は大挙して参集し、95年4月の統一地方選挙での「青島・ノック現象」、97年10月の宮城県知事選挙、98年7月の参議院選挙のように、選挙結果を大きく左右するのである。
[五十嵐仁]
『五十嵐仁著『概説 現代政治――その動態と理論』第3版(1999・法律文化社)』
(山口二郎 北海道大学教授 / 2007年)
(蒲島郁夫 東京大学教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…日本の中選挙区制は死票が比較的少なく効率がよい。〈無党派層〉は,特定の支持政党をもたない人々のことである。既存の政党に対する不信とそれによって生じた政治的無関心の結果と考えられる。…
※「無党派層」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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