翻訳|stoneware
陶磁器の一種。絵付をする目的でのうわぐすりを使用しない(一部食塩を釉薬(ゆうやく)として用いることもあるが絵付の目的ではない)で高温焼成して得られる。一般に吸水性がなく,焼締りが良いので機械的強度が大きい。絵は描かないが,火の回りぐあい,灰の掛りぐあいで自然に模様が生ずることがあり,風合(ふうあい)ができる。備前焼,信楽(しがらき)焼などがこれに属する。
執筆者:柳田 博明 〈石のように硬く焼きしめた器〉の意で,日本の陶芸用語としては,1907年ころから使われるようになった。素地が気孔質でないという点で陶器と異なり,透明度がないことで磁器とも区別される。ヨーロッパで最初に炻器を焼いたライン地方では,ケイ酸を豊富に含んだ陶土を用い,窯が1200℃くらいに達したときに食塩を投げ込んで釉薬とした。こうして焼成された炻器は,鉄分の含有量によって茶褐色,黒褐色あるいはまだらな鮫肌(さめはだ)の色調を呈する。その初期の作例として14世紀のものが残されているが,現存する大多数は15世紀末から16世紀のもので,主要生産地はケルンおよびその近郊のフレッヘン,レーレン,ボンに近いジークブルクなどである。またイギリスでは17世紀にこれらを模したフルハム窯(ロンドン郊外)の炻器,スタッフォードシャーのエラーズ兄弟の赤色炻器,アストバリーの白色炻器がある。
執筆者:前田 正明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
粘土器の一種で、素地は硬く、ガラス質または熔化(ようか)し、水を透過せず破面は貝殻状あるいは石状である。炻器は硬磁器と陶器の中間のものとみなされる。硬磁器と異なる点は主として非透光性あるいは薄い部分がわずかに透光性である点である。天然の粘土にほとんど手を加えずにつくられたものを粗炻器coarse stoneware、精製された原料または混合素地でつくられたものを精炻器fine stonewareといい、後者には素地の白いものも多く、工業用炻器として重要である。
[素木洋一]
「ストーンウェア」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…可塑性に富んだ粘土を用いて所定の形に成形し,高熱で焼き締めた要用の器物で,土器clayware,陶器pottery,炻器(せつき)stoneware,磁器porcelainの総称。一般に〈やきもの〉とも呼ばれる。…
…ルネサンス期にイタリアで開花した美しい絵付けのスズエナメル釉陶器は16世紀に入って堰を切ったようにアルプス以北に流出し,フランス,ドイツ,オランダでも盛んに焼成された(ファイアンス)。他方,このような技術の伝播とは別に,ケルンを中心としたライン川流域の各地では13世紀ころより塩釉炻器(せつき)が焼成されていた。塩釉炻器の焼成は,窯の温度が1200℃くらいに達したとき,窯の中に食塩を投げ込むことによって,食塩の塩化ナトリウムがソーダと塩素に分解され,ソーダは胎土のケイ酸とアルミナと化合し器の表面をガラス質で覆うことになる。…
…焼成温度は1000℃未満のものが多く,とくに600~800℃程度が多い。耐熱性の強い素地を用いて1000℃以上(1100~1300℃)の高温で焼き上げた,多孔質でない焼物(たとえば備前焼など)は炻器(せつき)と呼ばれる。考古学では,この種のもの(朝鮮半島の新羅(しらぎ)土器,日本の須恵器)も土器に含めるか,あるいは陶質土器と呼ぶことが多い。…
※「炻器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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