家庭医学館 「熱性けいれん」の解説
ねっせいけいれん【熱性けいれん Febrile Convulsion, Febrile Seizure】
生後6か月から6歳ぐらいまでの子どもが、38℃以上の熱をだしたときにおこすけいれんです。子ども10~20人に1人の割合で、男女ともにみられます。
遺伝的な素因が関係しておこります。
[症状]
急に発熱した際におこることが多く、左右の手足や顔面を激しくぴくつかせます。意識がなくなり、眼球(がんきゅう)がしばしば上を向いています。ほとんどは1~2分で治まりますが、ときに長引き、くちびるが紫色になります(チアノーゼ)。
いったん治まったけいれんが24時間以内に再発する、けいれんがからだの片側だけにおこる、意識がなくなって手足をだらりとさせ、けいれんはみられないなどのタイプもあります。
[検査と診断]
大部分は、上気道炎(じょうきどうえん)とくに咽頭炎(いんとうえん)の発熱の際におこりますが、ときに肺炎、胃腸炎でおこることもあります。この場合は、けいれんに対する検査は必要ありません。
髄膜炎(ずいまくえん)、脳炎、脳症などでも発熱とけいれんがおこりますが、これは、熱性けいれんには含めません。
けいれんが長引く・くり返す、けいれんが治まった後、意識がはっきりしない、吐(は)き気(け)がひどいなどのときは、医師の診察を受けましょう。
髄液検査(ずいえきけんさ)、血液検査、その他の精密検査が必要になることもあります。
脳波検査は、熱性けいれんの診断に不可欠ではないのですが、てんかんとの鑑別に役立つことがあるので実施します。
けいれんが、一度の発熱で2回以上おこる、からだの片側だけにおこる、熱がないのにけいれんをおこした人が、血のつながっている家族のなかにいるといったケースでは、脳波検査を受けたほうがいいでしょう。
[治療]
たいていは1~2分で治まりますから、けいれんがおこっているとき、意識がはっきりしないときは、顔を横に向け、吐物(とぶつ)が気道(きどう)に入らないようにしてようすをみます。
口の中に指や物を入れる手当は、行なわないようにします。
なかなかけいれんが治まらないときは、できるだけ早く医師の手当を受けましょう。
[予防]
後遺症が残ることはありませんし、熱性けいれんがくせになることは、ふつう、ありません。しかし、2、3人に1人の頻度で再発します。
このため、37.5℃以上の発熱に気づいたら、ジアゼパムという抗けいれん薬の坐薬(ざやく)かシロップ剤を使用します。医師が必要と認めた場合は、抗けいれん薬を毎日、服用します。
◎子どものけいれん性疾患と対応
子どもは、脳の発育が未熟なため、けいれんをおこしやすいのです。
もっとも多いのは熱性けいれんですが、ほかの原因のこともあるので、子どもがけいれんをおこしたときは、一度は、小児科医や小児神経科医のいる医療機関を受診しましょう。