精選版 日本国語大辞典 「燻・薫」の意味・読み・例文・類語
くすぶ・る【燻・薫】
〘自ラ五(四)〙
① 火がよく燃えないで煙ばかりが出る。いぶる。くすぼる。ふすぶる。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
② 煙の煤(すす)で黒くなる。また、それに似た様子である。すすける。くすぼる。
※洒落本・駅舎三友(1779頃)二階「くすぶった茶わんが出た」
④ (比喩的に) 事件、騒ぎ、不満などが、完全に解決されないまま、表立たないところで続いている。
※助左衛門四代記(1963)〈有吉佐和子〉序「口に出せない不満を胸の中でくすぶらせた」
くすぼ・る【燻・薫】
〘自ラ四〙
① =くすぶる(燻)①
※玉塵抄(1563)四二「无明煩悩の心の中にあってぜんぜんにくすぼりつるを云ぞ」
② =くすぶる(燻)②
※黄表紙・高漫斉行脚日記(1776)上「むしゃうにくすぼった身なりをすれども」
③ 陰気になる。気をくさらせている。不機嫌になる。
④ =くすぶる(燻)③
※倫敦消息(1901)〈夏目漱石〉二「人は〈略〉貧乏町にくすぼってると云って笑うかも知れないが」
くす・べる【燻・薫】
〘他バ下一〙 くす・ぶ 〘他バ下二〙
① 燃やして煙を出す。くすぶらせる。いぶす。ふすべる。
② (けむたい思いをさせる意から) 責める。意見する。また、嫉妬する。
※浮世草子・武道伝来記(1687)四「小間物売と密通したるとくすべられしに」
③ (時間を計るのに線香をたくところから) 娼妓を買うことをいう花街の語。
くゆ・る【燻・薫】
〘自ラ四〙
① 炎を上げないで煙だけ出して燃える。煙や匂いなどが立ちのぼる。くすぶる。
※後撰(951‐953頃)恋四・八六五「風をいたみくゆる煙の立ちいでても猶こりずまの浦ぞ恋しき〈紀貫之〉」
② 気がはれないで、あれこれと思い悩む。恋心などで思い悩む。
※大和(947‐957頃)一七一「人しれぬ心のうちに燃ゆる火は煙は立たでくゆりこそすれ」
くゆら・す【燻・薫】
[1] 〘他サ五(四)〙 (「くゆる(燻)」の他動形) 煙や匂いなどを立ちのぼらせる。くゆらかす。くゆらせる。
※六百番陳状(1193頃)春「山田庵の下に火をくゆらして」
※随筆・雲萍雑志(1843)一「此堂に立寄て、たばこくゆらしけるに」
[2] 〘他サ下二〙 ⇒くゆらせる(燻)
くゆら‐・せる【燻・薫】
〘他サ下一〙 くゆら・す 〘他サ下二〙 =くゆらす(燻)(一)
※大和(947‐957頃)六〇「女の燃えたるかたをかきて、煙をいとおほくくゆらせて」
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