(読み)スス

デジタル大辞泉 「煤」の意味・読み・例文・類語

すす【×煤】

有機物の不完全燃焼によって生じる炭素の黒い微粒子。「ストーブからが出る」
煤煙とほこりが一緒になって天井などについたもの。「天井のをはらう」
煤色すすいろ」の略。
[類語]けぶり・火煙・白煙黒煙炊煙・朝煙・夕煙紫煙香煙硝煙砲煙煙幕噴煙排煙油煙煤煙狼煙のろしくゆらす煙い煙たいむせっぽい

ばい【煤】[漢字項目]

人名用漢字] [音]バイ(漢) [訓]すす
すす。「煤煙煙煤
石炭。「煤炭

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精選版 日本国語大辞典 「煤」の意味・読み・例文・類語

すす【煤】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物が燃える際に、煙とともに出る黒い炭素の微粒子。また、それが梁の上、天井、煙突等に付着したもの。
    1. [初出の実例]「登陀流(とだる)天の新巣の凝烟〈凝烟を訓みて州須(スス)と云ふ〉の、八拳垂る摩弖(まで)焼き挙げ」(出典:古事記(712)上)
    2. 「真黒な煤がランプの光で輝やいて」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉五)
  3. 煤をとりのぞくこと。すすはき。すすはらい。
    1. [初出の実例]「脇指に替てほしがる旅刀〈芭蕉〉 煤をしまへばはや餠の段〈沾圃〉」(出典:俳諧・続猿蓑(1698)上)
    2. 「茎の石煤の夕に洗ひけり〈楽南〉」(出典:続春夏秋冬(1906‐07)〈河東碧梧桐選〉冬)
  4. すすいろ(煤色)」の略。

すすけ【煤】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「すすける(煤)」の連用形名詞化 ) すすけていること。すすけて黒くなっていること。うす汚く、よごれていること。
    1. [初出の実例]「衣もしろめず、おなじすすけにてあれば、いづち遣(や)りてけんなどにくむ」(出典:枕草子(10C終)八七)

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普及版 字通 「煤」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 13画

[字音] バイ
[字訓] すす・すみ

[字形] 形声
声符は某(ぼう)。〔呂覧、任数〕に「煤(ばいたい)、(そう)中に入る」の語があり、〔玉〕に「煤なり」という。煙のすすの意。

[訓義]
1. すす、煙のすす、すすける。
2. すみ、するすみ。

[古辞書の訓]
名義抄〕煤 スス・スヒ・ア(カ)マノアカ 〔立〕煤 カマノアカ・ヘスヒ・スス

[語系]
某声が暗く黒い意を含むことがある。それで煤muの音は霾memak、(墨)mkと声が近く、みな暗く黒い意がある。

[熟語]
煤煙・煤化・煤気煤礦・煤黒煤赭・煤色・煤・煤炭煤田・煤頭煤尾煤油
[下接語]
埃煤・煙煤・軽煤・香煤・松煤・新煤・塵煤・青煤・竈煤煤・桐煤・墨煤

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改訂新版 世界大百科事典 「煤」の意味・わかりやすい解説

煤 (すす)
soot

炭化水素などの有機物より不完全燃焼あるいは熱分解によって生じた黒色無定形の微粉末物質で,その成分は大部分が炭素であり,そのほか若干の酸素および微量の窒素,水素を含んでいる。同時にその表面の顕微鏡的状態は原料や生成条件ないし製法により異なり,単なる炭素微粒とは異なっている。すすは化学的組成としては工業的製品であるカーボンブラックと変わることはないが,すすという語感にはそのような工業的製品と区別して,火のあるところに自然発生的に生じた黒い炭素微粒を指す場合が多い。しかし墨の原料としてすすは古くから使用され,墨以外にも黒色顔料としても種々な目的に使用されたと思われる。そのような目的のために,原料として樹脂分の多い松材や,ナタネ油など油類を煙室で不完全燃焼させてすすをつくる。前者を松煙,後者を油煙と称している。現代でも奈良県では,このような古典的,伝統的な製法で得られたすすをにかわと練り固め上質の墨を製造している。
カーボンブラック →
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「煤」の意味・わかりやすい解説


すす

炭化水素が熱分解、あるいは不完全燃焼するときに生成する黒色無定形の微粉末物質。墨の原料となる。工業的製品をカーボンブラックという。

[編集部]

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百科事典マイペディア 「煤」の意味・わかりやすい解説

煤【すす】

有機物が不完全燃焼するとき生ずる炭素の微粒子。→カーボンブラック

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岩石学辞典 「煤」の解説

煤煙,石炭の粉.→クルム

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【石炭】より


[環境対策]
 〈環境対策〉の面で最も大きい問題は,燃焼に際しての〈排煙処理〉と〈灰処理〉である。排煙処理としては,煤塵と硫黄酸化物(SOx),窒素酸化物(NOx)の除去が必要で,いくつかの方法が実用化し,さらに進んだ技術も開発の途上にある。日本における規制は国際的にみてもひじょうにきびしく,その反映としてとくに排煙処理技術は世界最高のレベルにある。…

【燃焼】より

…物質が酸素などの酸化剤と化学反応を起こして生成物になると同時に,熱や光の形でエネルギーを放出する現象をいう。したがって,これは物質変換の過程であると同時に,エネルギー変換の過程であるが,前者は実際にはあまり使われないので,利用上は後者がおもな対象となる。家庭用の厨房(ちゆうぼう)・暖房器具から自動車,航空機のエンジン,さらに工業炉に至る一連の機器,設備は制御されたエネルギー変換の例であり,逆に制御に失敗してエネルギーの暴走が生じたのが火災や爆発災害である。…

※「煤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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