片岡良一(読み)かたおかよしかず

改訂新版 世界大百科事典 「片岡良一」の意味・わかりやすい解説

片岡良一 (かたおかよしかず)
生没年:1897-1957(明治30-昭和32)

日本近代文学研究基礎確立者の一人。神奈川県生れ。旧制一高で川端康成らと親しむ。大正中期から《新潮》などで新進の文芸批評家として活動をはじめたが,1921年東大国文選科に入り,現代文学の眼で西鶴全容をとらえた卒業論文井原西鶴》(1926)で国文学者として注目される。のち旧制姫路高校,東京府立高校,北京師範大学法政大学に勤めながら,それまで趣味か回顧の対象にすぎなかった日本近代文学にたいして,はじめて研究者として取り組み,精到な鑑賞と広い社会的な視野と鋭い批評とで,研究の基礎を確立した。《近代日本の作家作品》(1939)をはじめとする多くの著書は,没後も研究者たちに読まれ続けている。著作集11巻がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「片岡良一」の意味・わかりやすい解説

片岡良一
かたおかよしかず
(1897―1957)

国文学者。神奈川県生まれ。東京帝国大学国文科卒業。姫路高校、東京府立高校で教鞭(きょうべん)をとり、のち法政大学教授。卒業論文に加筆した『井原西鶴(さいかく)』(1926)で注目された。歴史社会学派に近い立場から自我と状況との緊張関係に目を据え、自由と自立の問題を具体的に追究してゆく柔軟で統一的な文学史観に特色がある。主著に『近代日本の作家と作品』(1939)、『近代日本文学の展望』(1941)、『自然主義研究』(1957)、『日本浪曼(ろうまん)主義文学研究』(1958)など。

古林 尚]

『『片岡良一著作集』全11巻(1979~80・中央公論社)』

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百科事典マイペディア 「片岡良一」の意味・わかりやすい解説

片岡良一【かたおかよしかず】

国文学者。神奈川県生れ。東大卒。法政大学教授。1926年の《井原西鶴》をはじめ,初期には近代文学の視点からの古典の研究,評価を試み,国文学界に大きな影響を与えたが,本領は近代文学史研究にある。1939年《近代日本の作家と作品》,1955年《夏目漱石の作品》,没後の1957年《自然主義研究》,1958年《日本浪漫主義文学研究》など。
→関連項目鎌倉アカデミア

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「片岡良一」の解説

片岡良一 かたおか-よしかず

1897-1957 昭和時代の国文学者。
明治30年1月5日生まれ。昭和9年法大教授となる。戦時中,北京師範大教授をつとめ,21年法大教授にもどる。近代文学研究の基礎をきずいたひとりとして知られ,自我と状況との緊張関係に着目した自我史観によって近代文学を展望した。昭和32年3月25日死去。60歳。神奈川県出身。東京帝大卒。著作に「近代日本の作家と作品」「井原西鶴」など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「片岡良一」の意味・わかりやすい解説

片岡良一
かたおかりょういち

[生]1897.1.5. 藤沢
[没]1957.3.25. 東京
国文学者。 1925年東京大学国文学科卒業。姫路高等学校,東京府立高等学校,法政大学の教授を歴任。かたわら,近代的自我史観に基づく日本近代文学の研究を精力的に推進し,当該研究領域における先駆的役割を果した。主著『近代日本の作家と作品』 (1939) ,『自然主義研究』 (57) など。

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世界大百科事典(旧版)内の片岡良一の言及

【鎌倉アカデミア】より

…戦争で手を汚さなかった教授陣を集め,文部省の中央集権的教育統制の外で,民主主義的な男女共学により,教授と学生とがお互いに鍛え合う学びの場をつくることを目ざした。初代校長飯塚友一郎の後をうけた三枝博音校長の下の陣容は,学監服部之総,教務課長菅井準一,文学科長林達夫,演劇科長村山知義,映画科長重宗和伸,産業科長早瀬利雄,図書部長片岡良一。のちに横浜市戸塚区小菅谷の旧海軍燃料廠に移転したが,財政難にアカの風評が重なり,50年9月に廃校となった。…

※「片岡良一」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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