愛知県豊橋市牛川町忠興の牛川鉱山から発見され,人骨であるといわれた化石。1957年に上腕骨が石川一美によって,59年に大腿骨の骨頭が紅村宏によって発見された。ニホンムカシジカ,ニホンザル,アナグマなどの動物骨も発見されている。年代は,当初は中期更新世に遡ると考えられたが,松浦秀治は後期更新世とみなしている。最初に研究した鈴木尚は,上腕骨を旧人女性のものと考え,身長を135cmと推定し,日本更新世人はピグミーだったとの説を提唱した。1988年以降,馬場悠男たちの検討により,この骨はヒトの骨と認められるだけの特徴を備えていないことがわかった。ただし,どの動物のどの骨であるか結論が得られていない。ナウマンゾウの子供の腓骨ではないかという意見もあるが,根拠は乏しい。大腿骨の骨頭はクマの可能性が高いといわれる。
執筆者:馬場 悠男
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愛知県豊橋(とよはし)市牛川町の石灰岩採石場で採集された洪積世(更新世)の人骨。採石作業中に岩裂中の粘土層に含まれていた骨片が出土し、そのなかから人の左側上腕骨の破片が検出された。この発見をきっかけとして、東京大学理学部人類学教室の鈴木尚(ひさし)らによって1957年(昭和32)9月と58年7月、8月の3回にわたる発掘調査が行われた。人骨や石器などは出土しなかったが、上記上腕骨に伴ったと考えられる獣骨多数が得られ、その種類から間接的にこの人骨が中部洪積世上部のものと推定された。鈴木によると、問題の人骨は身長135センチメートルほどの女性のもので、その形態からかなりの原始性がうかがえるが、頭骨が出土しなかったため人類進化上の位置づけは保留された。その後同じ採石場で左側大腿(だいたい)骨片も採集されている。牛川人は発見例の少ないわが国の洪積世人骨というだけでなく、新人よりも古いものである可能性を有する点にいっそうの重要性がある。
[今村啓爾]
『鈴木尚著『日本人の骨』(岩波新書)』
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愛知県豊橋市牛川町の石灰岩採石場で,1957年(昭和32)に発見された左上腕骨中央部の化石。鈴木尚(ひさし)・高井冬二らの研究により,更新世中期の,身長約135cmの女性のものと判断された。ヨーロッパのネアンデルタール人の上腕骨との形態的な類似が認められるが,頭骨が発見されていないため進化の段階についてはまだ明らかではない。
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