故事成語を知る辞典 「物言えば唇寒し」の解説
物言えば唇寒し
[使用例] 泣く
[使用例] そういうふうに意味をストレートにとられてしまうところに座談のむずかしさがあるのだが、近ごろはぼくもなるべく安全圏を保っている。「もの言えば唇寒し」である[手塚治虫*ぼくはマンガ家|1969]
[由来] 「芭蕉庵小文庫―秋」が伝える、松尾芭蕉の句から。この書物では、まず、中国の
[解説] ❶崔瑗の「座右の銘」は、いわゆる「座右の銘」の本家。平安時代以降、日本でもよく読まれた名文集「文選」にも収録されていて、有名です。芭蕉はそれを踏まえた上で、悪口や自慢話につきまとう後味の悪さを、「唇寒し」と表現したのでしょう。ものさびしく吹く秋の風は、自己嫌悪の心象風景ともなっています。❷つまり、本来は「謙遜の気持ちを忘れないように」という戒めのことば。それが、「災いを招かないように」という意味に転じたのは、「唇亡びて歯寒し」の影響だと思われます。これは、助け合う片方が滅びると、もう片方にも災いが及ぶことを意味する、故事成語です。
〔異形〕唇寒し。
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