日本大百科全書(ニッポニカ) 「犯罪者予防更生法」の意味・わかりやすい解説
犯罪者予防更生法
はんざいしゃよぼうこうせいほう
犯罪をした者の改善および更生を助け、恩赦の適正な運用を図り、仮釈放その他の関係事項の管理について公正妥当な制度を定め、犯罪予防の活動を助長することによって、社会を保護し、個人および公共の福祉を増進することを目的としていた法律。昭和24年法律第142号。2008年(平成20)に廃止。前記の目的の達成のため、すべての国民がその地位と能力に応じ、それぞれ応分の寄与をするよう促していた。1949年(昭和24)犯罪の激増と累犯者の増加に対処するために制定された。当時は第二次世界大戦の戦災による刑務所等の焼失と社会の荒廃が生み出す多数の犯罪者により刑務所は過剰拘禁状態にあり、その解決手段として刑の執行猶予や仮釈放の制度が多用されたが、それは多数の累犯者を生み出すことになった。この法律は、仮釈放許可官庁を地方更生保護委員会とするとともに、仮釈放を許された者には原則として保護観察所の保護観察官または保護司による保護観察を行い、一定の遵守事項を定めてそれを守らせ、職業・医療などについて必要な援護措置を講じることによって、同法施行以前には放任状態だった仮釈放者の改善更生を促進しようとするものであった。またこの法律は、第二次世界大戦前、思想犯保護観察法によってわずかに行われていたにすぎない成人に対する社会内処遇(社会のなかで生活を営ませながら行う犯罪者処遇の形式)を発展させるきっかけにもなった。1953年刑法第25条の2の新設、これを受けて1954年執行猶予者保護観察法の制定があり、刑の執行猶予に付された者のうち、その改善更生のために必要と認められる者に保護観察を行えるようになった。
恩赦は、大赦、特赦、減刑、刑の執行免除、復権の5種類があり、内閣の決定による。詳細は恩赦法が規定しているが、同法は、特定の者に対する恩赦が、適正妥当に行われるように、あらかじめ本人の性格、行状、違法行為をするおそれ、本人に対する社会の感情などについて調査すべき義務を中央更生保護審査会に課していた。
その後、2007年(平成19)に本法「犯罪者予防更生法」と「執行猶予者保護観察法」を統合した「更生保護法」(平成19年法律第88号)が公布され、2008年に施行されたことに伴い、本法および執行猶予者保護観察法は廃止された。
[須々木主一・小西暁和]