刑務所や少年院などの矯正施設に収容された者を拘禁期限に先だち釈放すること。沿革的には,18世紀末にイギリスの流刑地オーストラリアで監獄内の秩序維持のため,行状のよい流刑者に恩典として授けられたのが始まりとされ,累進処遇の最上級に対する処遇方法として発達した。この褒賞としての意味のほかに,現在では,施設拘禁が長期にわたることの弊害を避け,早期に釈放し,一定期間社会内で補導・援護を行うことが,被収容者の社会復帰の促進に資するという刑事政策的意義が認められている。
日本では,江戸時代の人足寄場の制度にその萌芽が見られるとされるが,近代になって初めて仮出獄制度を規定したのは1882年施行の旧刑法である。現行制度としては,仮出獄(刑法28条),仮退院(少年院法12条2項,売春防止法25条),仮出場(刑法30条)の3種がある。前2者は条件付仮釈放と呼ばれるもので,仮釈放の期間中保護観察に付され,遵守事項に違反した場合には処分の取消し・戻し収容処分が行われることがある。仮出獄は,懲役・禁錮の受刑者に対し,有期の場合は刑期の3分の1,無期の場合は服役後10年を経過した後に,改悛の情がある者に対して地方更生保護委員会の決定によって許可される。仮出獄期間は残刑期間であり,取り消されることなくその期間を経過した時には服役を終わったことになる。仮出獄を社会復帰のための処遇の一段階と考える時には,満期釈放や残刑期間の短い者にはよく機能しないという欠点が指摘されており,諸外国の立法例には,必ず一定の仮出獄期間を置くようにしているものもある。仮退院は少年院と婦人補導院の入院者に対し,施設長の申請に基づき前記委員会の決定によって行われるもので,後者については補導処分(6ヵ月)の残期間を経過した場合に執行が終わったものとされるが,少年院仮退院者の場合は仮退院期間中の成績により同委員会によって退院が許可される。仮出場は,拘留に処せられた者および罰金・科料を完納できないため労役場に留置された者について許されるもので,保護観察もなく,取り消されることもないところから無条件仮釈放と呼ばれる。
執筆者:岩井 宜子
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施設収容を伴う刑または刑事処分などにつき、収容期間満了前に収容者を釈放する制度。1791年、イギリスの流刑(るけい)地オーストラリアで始まり、その後世界的に採用された。現行法上は、懲役・禁錮について仮釈放(狭義)、拘留・労役場留置について仮出場、少年院・婦人補導院について仮退院がある。仮釈放の期間は、少年院からの仮退院の場合は原則として20歳に達するまで(特定少年〈18歳・19歳の少年〉として少年院送致の保護処分を受けた者は除く)、その他は残りの収容期間と同じである。仮釈放期間を無事に経過すれば、刑または刑事処分などの執行が終わったものとされるが、その期間中に遵守事項違反または再犯を理由として仮釈放が取り消されれば、ふたたび施設に収容され、仮釈放時点で残された収容期間と同じ期間、施設内で処遇を受ける。ただし仮出場については取消しの制度はない。仮釈放(狭義)は、有期刑については刑期の3分の1、無期刑については10年を経過したのち(少年〈特定少年を除く〉のとき刑の言渡しを受けた者には特則がある)、本人の悔悟の情、更生の意欲、再犯のおそれ、社会の感情という四つの基準を総合的に判断し、保護観察に付することが本人の改善更生のために相当であると認められるときに許される。仮退院と仮出場は収容の目的が達せられた適当な時期に行われる。更生保護法(平成19年法律第88号)により、仮釈放決定機関は地方更生保護委員会とされ、仮出場の場合を除き、仮釈放の期間中は原則として、保護観察が行われる。これをパロールparoleともいう。
[須々木主一・小西暁和 2022年6月22日]
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…こうして〈行刑〉は,端的に〈自由刑の(具体化としての)執行〉を意味することになる。そして外部通勤や外部通学,所用のために刑務所を離れる数日間の外泊,さらには施設内処遇と社会内処遇を連結させる必要的仮釈放や中間施設などが議論され,自由刑の刑罰内容が縮小するにつれて,仮釈放中の生活のみならず,保護観察中のものや,現在イギリスなどで広がりつつある地域社会奉仕命令community service orderのようなものも含めて行刑のもとに構想することができるようになってくる。
[欧米における行刑の展開]
都市に集まる浮浪者群を施設に収容して働かせることが,16世紀半ばから終りにかけて,イギリスのロンドンや,オランダのアムステルダムで始まった。…
※「仮釈放」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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