広義では,一度処罰されたことのある者がふたたび犯罪を犯すことをいう。一次の累行が再犯であり,それ以上は三犯,四犯となる。累犯はヨーロッパにおいて19世紀後半以降,都市化,工業化,景気変動に伴う失業等を背景として急激に増加し,形而上学的な古典的刑法学に反省を促し,近代学派や犯罪学誕生の契機となった。日本でも今日なお新受刑者の約半数が累犯者である。累犯者対策は各国の刑事政策の中心的課題であるが,立法例としては一定の要件を充足する累犯に対して刑を加重するものが多い。日本の刑法は,懲役に処せられた者がその執行を終わった日から5年以内にさらに罪を犯し有期懲役に処せられるべき場合またはこれに準じる場合(刑法56条)に,刑の長期を法定刑の2倍に加重している(57条)。三犯以上も同様である(59条)。これを狭義の累犯または法律上の累犯という。なお,改正刑法草案はこの要件を緩和し,禁固も含め,さらに刑の執行猶予中の犯罪についても累犯とする(改正刑法草案56条)が,刑の加重を必要的ではなく任意的としている(57条)。累犯加重の根拠としては,前刑の宣告ないし執行による警告を無視した点で当該行為に対する非難可能性が高く,責任が重いことがあげられる。しかし,これに対しては,責任主義,とくに当該行為のみに注目してそれに見合う刑罰を科すべきだとする行為責任主義に反するのではないかという批判もある。累犯は常習犯と異なり,必ずしも犯行を反復する習癖に基づかなくてもよい。しかし,実際上は両者が重なって常習累犯となることも多い。このような常習累犯に対しては,刑の加重ではなく,保安処分を規定する立法例もある。改正刑法草案は不定期刑を規定した(58,59条)。
執筆者:林 美月子
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一定の期間内に所定の犯罪を繰り返すことにより、刑が加重されるものをいう。19世紀後半以降のヨーロッパでは、累犯が激増し、刑法学上の強い関心を集めたが、現在のわが国でも、累犯者数は新受刑者の過半数を超え、刑事政策上、大きな問題となっている。累犯については、これを一般的な刑の加重事由とする立法例が多い。わが国の刑法は、累犯につき、第一編第10章において、懲役に処せられた者などが、その執行を終わった日またはその執行の免除を得た日から5年以内にさらに罪を犯した場合を「再犯」として、再犯の刑を、その罪について定めた懲役の長期の2倍以下とする、と規定している(56条、57条)。また3犯以上の者についても、再犯の例による(59条)。なお、累犯のうち、累犯者が犯罪を反復する危険性(常習性)を有する場合は常習累犯(常習犯)とよばれるが、現行法には一般的な規定がなく、常習賭博罪(刑法186条1項)など、個別的に加重類型を設けるにすぎない。
[名和鐵郎]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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…以上は三奉行,火付盗賊改の例で,人足寄場や遠国奉行では形状が異なった。入墨はまた累犯処罰の目印で,窃盗罪などでは初犯敲,再犯入墨,三犯死罪とされていた。入墨を施されると社会生活が困難になるため,犯罪者は追放刑より入墨を恐れた。…
※「累犯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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