母船式漁業を営む場合に、母船(船内に製造設備、冷蔵設備、その他の漁獲物処理設備を備えた船舶)に付属し、もっぱら漁獲物の採捕に従事して母船に漁獲物を供給することを目的とする漁船のうち、搭載漁船でないものをいう。母船式漁業に属してはいても、母船式カツオ・マグロ漁業の母船に搭載した漁船、また母船式捕鯨業に付属する捕鯨船はキャッチャーボートと称し、独航船とはよばない。
独航船は母船と一体となって船団を組んで航行し、漁期中連続して操業を行う。漁場の選択、操業方法など操業に関しては船団としての統一した意志決定のもとで母船の指示により行う。独航船は漁獲物を母船に水揚げし、母船から燃油、食料、そのほか操業上必要な物資の補給を受ける。母船は根拠地的役割のみを分担して、漁獲物の処理と物資の補給を行う場合は漁業法上の母船式漁業の範囲には入らないが、一般にはこの場合も付属する漁船を独航船といった。
かつて漁業法には、独航船を伴う母船式漁業種目として、底引網漁業、捕鯨業、カツオ・マグロ漁業、サケ・マス漁業、カニ漁業などがあったが、海洋権益の保持、乱獲防止、資源管理などを目的とした排他的経済水域が設定され、母船式底引網漁業、母船式サケ・マス漁業および母船式カニ漁業はモラトリアム化(一時停止)され、他の漁業種目も禁止などで現在は行われていない。
[嶋村哲哉・添田秀男・吉原喜好]
母船に付属して漁業を行う漁船をいい,母船にのせずに日本の基地から漁場に独航することから生じた名称である。各種の母船式漁業には独航船が付属しているが,母船式捕鯨業においては捕鯨船(キャッチャーボート)とよばれている。母船式サケ・マス流し網漁業における独航船は1船団に43隻付属しているが,すべて124トン型である。船尾に大きな網置場を設け,前甲板に揚網機を備え,揚網した刺網は送網機を通して船尾におくられ,網さばき機により次の投網に備えて積み付けられる。
母船式底引網漁業においては,種々の形式の底引網漁船が漁期の間だけ付属独航船として使用されている。ある船団の独航船の構成は以東底引網漁船124トン型2隻と以西底引網漁船215トン型9組(18隻)からなっている。また別の船団では北転船ばかりであるが,240トン型6隻と280トン型3隻で構成されている。独航船においては,漁獲物を船内で処理することはなく,1引網ごとに入った魚をいくつかのコッドエンドcod end(魚捕り)に仕分け,船の玄側に結んで母船の所まで曳航し,母船に漁獲物を引き渡す。5月初旬から10月初旬までの期間,このような操業を1日3~4回ずつ繰り返して行う。
執筆者:竹内 正一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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