共同通信ニュース用語解説 「狭山事件」の解説
狭山事件
1963年5月1日、埼玉県狭山市の女子高校生=当時(16)=が行方不明になり、自宅に脅迫状が届いた。身代金受け取りのため現れた犯人を埼玉県警が取り逃がし、4日に遺体が見つかった。県警は現場近くに住む
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1963年5月1日、埼玉県狭山市の女子高校生=当時(16)=が行方不明になり、自宅に脅迫状が届いた。身代金受け取りのため現れた犯人を埼玉県警が取り逃がし、4日に遺体が見つかった。県警は現場近くに住む
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1963年5月1日,埼玉県狭山市で帰宅途中の女子高校生が行方不明となり,4日に死体で発見された。その間の2日夜には,脅迫状を送って身代金を受け取りに来た犯人を,張込み中の警官隊が取り逃がした。警察は予断と偏見にもとづいて被差別部落の見込み捜査を行い,23日部落出身の青年石川一雄を別件逮捕して〈犯行〉を〈自供〉させた。被疑者が強盗強姦・強盗殺人・死体遺棄・恐喝未遂・窃盗などの〈容疑〉で起訴されると,浦和地方裁判所はもっぱら〈自白〉にもとづいて審理を進め,64年3月11日,石川被告に〈死刑〉を宣告した。石川は控訴し,同年9月10日,東京高等裁判所第二審の冒頭に,先の〈自白〉を翻して〈犯行〉を否認した。事実審理が進められるなかで脅迫状の筆跡,万年筆の隠匿状況,死体処置の状況,地下足袋の大きさなど,〈自白〉と符合しない諸事実が浮かび上がり,事件は部落差別のからむ〈冤罪(えんざい)〉との疑惑が強まった。部落解放同盟をはじめ民主団体・文化人などによって,公正裁判と〈無実〉の被告の釈放とを要求する救援運動が展開されたが,東京高裁は74年10月31日,一審判決破棄・〈無期懲役〉の判決を下し,石川を〈有罪〉と認めた。77年8月9日,最高裁判所は被告の上告を却下し,異議申立てをも8月15日付で却下したため,〈無期懲役〉の刑が確定するにいたった。石川は同年8月30日に再審請求を提出した。これに対して,東京高裁は80年2月7日棄却の決定を下し,81年3月25日には異議申立てをも棄却したため,被告は同月30日に最高裁に特別抗告申立てを行ったが,最高裁は〈新証拠〉の事実調べをせず,85年5月28日,これを棄却した。そこで石川は86年8月21日,東京高裁に第2次再審請求を行った。その後87年8月16日,刑確定より10年が経過して仮出獄の請求資格要件が整い,石川は94年12月21日,37年ぶりに〈仮出獄〉したが,部落解放同盟を中心に,再審の開始と事実調べ,全証拠の開示などを要求する運動が大衆的に進められており,石川自身も,仮出獄が〈無罪釈放〉ではないことから,自らの潔白と第2次再審請求への支援を訴えつづけている。
→被差別部落
執筆者:川村 善二郎
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…そのためにも,前項〈近・現代の被差別部落〉を受け継ぎながら,近年におこった重要な事項について,年次を追って概観しておくこととしよう。
[狭山事件]
まず,〈狭山事件〉のことがある。これは1963年5月,埼玉県狭山市で発生した女子高校生の誘拐殺人事件の容疑者として被差別部落の一青年(石川一雄)が逮捕され,取調べの結果,犯行を自白し,64年3月,浦和地方裁判所での第一審判決で死刑の宣告を受けたが,同年9月の第二審(控訴審,東京高等裁判所)法廷で犯行を否認したことに端を発する。…
※「狭山事件」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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