たまより‐ひめ【玉依姫】
※日本紀竟宴和歌‐延喜六年(906)「しらなみに多万余理毗咩
(タマヨリヒメ)のこし事は渚やつひにとまりなりけむ〈
大江千古〉」
[補注]この名は、この外にも記紀で高御産巣日神
(たかみむすびのかみ)の娘万津幡豊秋津姫の子として、また「逸文山城
風土記」所引
賀茂神社の伝承に
賀茂別雷命を
丹塗矢で受胎した母として見え、元来は
普通名詞的な巫女
(みこ)の意であったか。
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玉依姫
『山城国風土記』逸文にみえる女神。神武天皇の先導をしたと伝える賀茂建角身命の娘。丹塗矢となって瀬見の小川を流れ下ってきた火雷神との間に,可茂別雷命(賀茂別雷命)を生む。玉は霊的な存在を表している。そして「依」とは憑依すること,寄りつくことを表す。世に巫女と呼ばれる女性がいて,その本来的な役目は神を迎えることであり,ときにその滞在の間,妻となって神の子を宿す役割を果たすことがある。この玉依姫の話はまさにそのような巫女のありようが神話的に構成されたものである。<参考文献>柳田国男「妹の力」(『柳田国男全集』11巻)
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玉依姫 たまよりひめ
記・紀にみえる女神。
豊玉姫の妹。彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)と結婚した姉の生んだ鸕鷀草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと)を養育し,のちその妃となり,神日本磐余彦尊(かむやまといわれびこのみこと)(神武天皇)ら男子4人を生む。「古事記」には玉依毘売とある。
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たまよりひめ【玉依姫】
記紀,《風土記》に登場する女性の名。たとえば,毎夜訪れる見知らぬ若者(実は大物主(おおものぬし)神)によってみごもり,三輪氏の祖を生んだとされる女性,海神(わたつみ)の娘で,海幸山幸神話の主人公火遠理(ほおり)命の子の乳母でのちには妻となり,神武天皇を生んだとされる女性,丹塗矢(にぬりや)と化した火雷(ほのいかずち)神に感精して賀茂氏の祖神を生んだとされる女性などがタマヨリヒメとよばれている。物語の中では固有名詞のように扱われているが,むしろ普通名詞と考えたほうがよい。
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世界大百科事典内の玉依姫の言及
【処女懐胎】より
…このような処女懐胎の物語は,日本の説話伝承にもいくつか指摘することができる。たとえば,山城の賀茂では,上の社殿に水と関係の深い賀茂別雷(かもわけいかずち)命をまつり,下の社殿に,その母神玉依姫(たまよりひめ)をまつっているが,母神は,小川を流れ下る丹塗りの矢によって別雷命を生んだとされる。いわゆる〈丹塗り矢式〉の神婚説話として広く分布する伝承であるが,石田英一郎によると,こうした各地に流布する説話伝承の背後には,すでに消滅しかけた処女懐胎の古信仰があるという(《桃太郎の母》)。…
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