豊玉姫(読み)トヨタマビメ

デジタル大辞泉 「豊玉姫」の意味・読み・例文・類語

とよたま‐びめ【豊玉姫/豊玉毘売】

日本神話で、海神豊玉彦神の娘。彦火火出見尊ひこほほでみのみこと山幸彦やまさちひこ)の妻となり鸕鷀草葺不合尊うがやふきあえずのみことを生む。

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改訂新版 世界大百科事典 「豊玉姫」の意味・わかりやすい解説

豊玉姫 (とよたまひめ)

記紀神話に登場する海神(わたつみ)の娘。豊玉毘売などとも記す。海神宮を訪れた火遠理(ほおり)命と結婚し,身ごもった子を産むために海辺にやってくる。しかし産屋の中でワニの姿で苦しんでいるところをのぞき見されて怒り,子をおいて海底の国に帰る。子は鸕鷀草葺不合(うがやふきあえず)尊と名づけられた。古代神話には,神霊に依り憑(つ)かれて身ごもるゆえに玉依姫(たまよりひめ)とよばれる女性がしばしば登場する。神の降臨秘儀に立ち会う巫女の神話的形象化だが,トヨタマヒメもその一人である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「豊玉姫」の意味・わかりやすい解説

豊玉姫
とよたまひめ

記紀神話における海神(わたつみ)の娘。海神国に赴いた山幸彦(火遠理命(ほおりのみこと))と結婚し、御子(みこ)を生むために山幸彦を追って海辺に至った豊玉姫は、鵜(う)の羽を葺(ふ)いて産屋(うぶや)をつくる。しかし出産が迫って葺き終えぬままに産屋に入り、山幸彦に、他界の者は出産のおり生まれた世界の姿で子を生むので見てはいけないと頼む。ところがこの禁を不思議に思って山幸彦がのぞくと、姫は大鰐(おおわに)となってはいくねっていた。辱めを受けた姫は、生んだ御子(鵜葺草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと))を海辺に置き、海への通路を閉じて去る。この神話は世界に広く分布する、始祖誕生を含む異類女房譚であろう。なお、こののち姫は妹の玉依姫(たまよりひめ)を御子の養育のために遣わし、玉依姫はこの御子と結婚して神武(じんむ)天皇以下の母となる。

吉井 巖]

『関敬吾著『海神の乙女』(『昔話の歴史』所収・1966・至文堂)』

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百科事典マイペディア 「豊玉姫」の意味・わかりやすい解説

豊玉姫【とよたまひめ】

日本神話の女神。海神の娘,火遠理命(ほおりのみこと)の妃。出産の姿を夫に見るなと禁じるが,夫はその禁を破り,姫が八尋(やひろ)の鰐(わに)の姿で出産するのを見る。姫は恥じて海中に去る。その子がウガヤフキアエズノミコトで,玉依姫に育てられた。東アジア,インドシナに広く分布する説話型である。
→関連項目真床追衾

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「豊玉姫」の解説

豊玉姫 とよたまひめ

記・紀神話にみえる神。
海幸(うみさち)・山幸(やまさち)の物語に登場する海神(わたつみ)の娘。彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)(山幸彦)と結婚するが,出産の際,大鰐(おおわに)(「日本書紀」では竜)の姿にもどっているのを夫にのぞかれ,生んだ子(鸕鷀草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと))をのこして海にかえってしまう。「古事記」では豊玉毘売。

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