王梵志(読み)おうぼんじ(英語表記)Wáng Fàn zhì

改訂新版 世界大百科事典 「王梵志」の意味・わかりやすい解説

王梵志 (おうぼんじ)
Wáng Fàn zhì

中国,唐代初期の詩人,説教僧。7世紀後半より8世紀前半の人。20世紀の初め,その詩集写本敦煌石窟から多数発見された。俗語多用し,唐詩の一般的規格にはまらぬものが多い。世態人情の酷薄さ愚劣さを直叙したもの,仏教道理を通俗的・現実的に説示したもの,隠者的な自適心境を詠じたものなど3類に分けられる。これらの点で後出の寒山の詩(寒山・拾得)の先蹤(せんしよう)をなすものと認められる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「王梵志」の意味・わかりやすい解説

王梵志
おうぼんし

生没年不詳。中国、唐代の僧侶(そうりょ)、詩人。経歴、詩集とも早くに隠滅し、20世紀初頭、敦煌(とんこう)出土文書なかから写本詩集の断片が数種発見された。おそらく盛唐期前後に活躍した説教僧と推定され、庶民に仏教の教義を平易に説いた勧世詩、さらには脱俗的な隠遁(いんとん)思想を歌う作品をつくり、唐末から北宋(ほくそう)にかけてかなり広く読まれていた。俗語の多用と、民衆的な感覚を色濃くもつのを特色とする。もと3巻あった詩集は、断片を総合すればかなりの部分は復原可能であるが、完本は伝わらず、『全唐詩』にも未収

[佐藤 保 2017年1月19日]

『入矢義高「王梵志詩集攷」(『神田博士還暦記念書誌学論集』所収・1957・神田博士還暦記念会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「王梵志」の意味・わかりやすい解説

王梵志
おうぼんし
Wang Fan-zhi

中国,唐代の僧侶,詩人。早くから伝記が不明となり,その詩集も宋末には失われ,ただ詩の断片が随筆や詩話に引用されるだけの,伝説的な存在となっていたが,20世紀の初め敦煌 (とんこう) から発見された文書のなかに,その詩集の写本が十数種あったところから,再び世に知られるようになった。口語的な表現を多く含み,わかりやすく教訓的な「説理」の詩が大部分を占め,その内容からみて町や村を説教して回る行脚僧であったと考えられている。

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