日本大百科全書(ニッポニカ) 「田淵安一」の意味・わかりやすい解説
田淵安一
たぶちやすかず
(1921―2009)
洋画家。北九州市小倉(こくら)生まれ。幼少期から油絵を描き始める。1948年(昭和23)東京大学美術史学科を卒業、同大学院へ進む。在学中から猪熊(いのくま)弦一郎の研究所に通い、新制作協会展に出品する。1951年私費留学生としてソルボンヌ大学に留学。岡本太郎、菅井汲(すがいくみ)、今井俊満などの日本人画家のほか、コブラ系の作家たちと交友して抽象表現へと向かう。パリでのレアリテ・ヌーベル展、サロン・ド・メに出品して注目を集め、フランスから日本へと紹介されるようになる。1959年プレミオ・リソーネ展で買上賞(出品作品を買い上げる賞)、1966年現代日本美術展で優秀賞受賞。サン・パウロ・ビエンナーレ展、インド・トリエンナーレ展ほか、多くの国際展に招かれ、受賞も多数ある。1996年(平成8)神奈川県立近代美術館で田淵安一展が開催された。つねにヨーロッパと東洋、日本の文化・美術の伝統を踏まえて、とくに南画(なんが)系と琳派(りんぱ)系との現代的調和を思わせるような、豊かな色彩性とダイナミックなフォルムとの饗宴(きょうえん)が特色である。著書に『西欧人の原像』『二面の鏡』ほかがある。
[小倉忠夫・柳沢秀行]
『『西欧人の原像』(1976・人文書院)』▽『『西欧の素肌ヨーロッパのこころ』(1979・新潮社)』▽『『二面の鏡』(1982・筑摩書房)』▽『『アペリチフをどうぞ』(1985・読売新聞社)』▽『『イデアの結界――西欧的感性のかたち』(1994・人文書院)』▽『神奈川県立近代美術館編・刊『田淵安一展――宇宙庭園』(1996)』▽『『ブルターニュ・風と沈黙』(1996・人文書院)』▽『『西の眼東の眼』(2001・新潮社)』