日本大百科全書(ニッポニカ) 「由岐」の意味・わかりやすい解説
由岐
ゆき
徳島県南東部、海部郡(かいふぐん)にあった旧町名(由岐町(ちょう))。現在は美波町(みなみちょう)の東部を占める地域。太平洋に臨む。旧由岐町は、1955年(昭和30)三岐田(みきた)町と阿部(あぶ)村が合併して成立。2006年(平成18)日和佐(ひわさ)町と合併して、美波町となった。JR牟岐(むぎ)線が通じる。沿岸は沈降性海岸で出入りに富み、由岐、志和岐(しわぎ)、阿部の各港は天然の良港である。山地が海に迫っているため平地に乏しく、阿部地区は1957年に県道が開通するまでは交通は渡船により、陸の孤島といわれた。海女(あま)によるアワビ取りがあり、「いただきさん」とよばれる頭上運搬の行商で知られた。由岐港の天然の防波堤をなす箆野(ぬの)島などは磯(いそ)釣りで知られる。田井ノ浜(たいのはま)は海水浴場として夏季には臨時駅が設置される。なお、2001年に田井で縄文中期の遺跡が発見された。
[高木秀樹]
『『由岐町史』全2巻(1985、1994・由岐町)』▽『『由岐町郷土事典』(2004・由岐町)』