町役(読み)チョウヤク

デジタル大辞泉 「町役」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐やく〔チャウ‐〕【町役】

町内住民として果たさなければならない義務つきあい。まちやく。
「―の野おくりには出ぬ事なりがたし」〈浮・織留・五〉
江戸時代大坂町人に賦課された町内の費用。まちやく。
町役人ちょうやくにん」の略。→まちやくにん(町役人)

まち‐やく【町役】

町人に課せられた諸役金銭負担労務的負担とがあり、地主が負担した。
町役人」の略。ちょうやく。

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精選版 日本国語大辞典 「町役」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐やくチャウ‥【町役】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 町内の住民としての義理やつきあい。町内に一戸をかまえる者に対して課せられた。近世、江戸や大坂などでは、町内見回り、冠婚葬祭などに一軒から必ずひとりは出なければならないなどの義務があった。まちやく。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「いやといはれぬ祝言振舞、町役(ちゃうヤク)の野おくりには出ぬ事成難し」(出典:浮世草子・西鶴織留(1694)五)
  3. 特に、大坂で、各町の費用をその町人に負担させるもの。一軒一役の役割のほか、間口割、坪割、顔割(町人の頭数による)などの方法で徴収された。
    1. [初出の実例]「恋衣おもきが上に打かけて 待宵のかねはらふ町役〈素玄〉」(出典:俳諧・大坂独吟集(1675)上)
  4. ちょうやくにん(町役人)」の略。
    1. [初出の実例]「耳にたつ町役持ば犬の声」(出典:雑俳・笠付類題集(1834))

まち‐やく【町役】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 町人に課せられた諸役。公役銀、町費など金銭の負担と、自身番・諸行事への出席など労務の負担の両者があり、地主が負担した。ちょうやく。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  3. まちやくにん(町役人)」の略。
    1. [初出の実例]「お前も町役(マチヤク)をしながら、あんまり智慧がないぞ」(出典:歌舞伎・四天王楓江戸粧(1804)二番目)

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改訂新版 世界大百科事典 「町役」の意味・わかりやすい解説

町役 (ちょうやく)

日本近世の町人が,その地縁的共同体である町(ちよう)を介して勤めた役負担の総称。町役としてくくられる諸負担としては,(1)国家や領主権力への役負担や音信礼,(2)その町人が所属する町の共同体諸経費,(3)当該の町が属する都市の町方全域(惣町)や,その部分(組合町)など,広域の都市行政諸経費などがあるが,本来的には,(1)が町役の原義である。この国家や領主権力への役負担などの中心は,町人足役(ちようにんそくやく)と,伝馬役(てんまやく)とである。

 町人足役は公役(くやく),町夫(ちようぶ)とも呼ばれ,町人身分の者が勤める人足役,すなわち労役の奉仕を意味する。町人足役は非常に多様な内容をもち,城郭をはじめとする権力の諸施設の建設や修理,またそれらの維持・管理に伴う手伝(てつだい)人足や雑役労働,領主の賄方(まかないかた)(台所)への手伝人足や料理人,堀や河川,道路,橋梁の普請・修理や清掃の人足,火消や防火のための人足などからなり,国家や領主権力の都市居住に伴って発生する,膨大な雑役に従事することが基本的な内容であった。これらの労役は,原理的には町人がみずから勤めるべきものであったが,近世初期から,その多くは日用(ひよう)などによって代勤された。すなわち,これらの雑役を請け負う専業の商人(日用頭(ひようがしら))が町などからその代勤を請け負い,町人は自己の役負担を町などへ代銀で支払うのが通例であった。こうして日用頭や日用層は,町人という身分にとって不可欠な,また表裏の存在として,近世都市の各所に多数定着していくのである。次に伝馬役は,馬や人足による交通体系維持のための労働の奉仕で,本来は諸職人などを除くすべての人民が負担すべき普遍的な役儀の一つであった。この伝馬役は,日常的には,宿駅やその周辺の町人・百姓によって担われた。宿駅の中で,とくに交通の拠点や要衝のものは,城下町やその他の諸都市の中心部分にあたる町共同体である場合が多く,またその他の中小の宿駅も,事実上の町を単位に構成されていたことなどから,近世前期において伝馬役はむしろ,町人固有の役負担として認識されたのではないかと思われる。

 これらの町人足役や伝馬役は先の(2)(3)とともに一括して,町入用(ちよういりよう)として町レベルで算用され,これが町内の町人に,その家屋敷の軒数や間口,間数に応じて割り当てられた。このために,第1に,(1)~(3)の各レベルの諸負担は全体として,町に居住する町人独自の負担=町役として認識され,百姓にとっての固有の負担=年貢の対極にあるものとして位置づけられることが多かった。また第2に,町役とは町方の家屋敷,すなわち町屋敷という土地に付属した負担という意味を帯びることになった。その結果,町人以外の者でも町方において町屋敷を所持する者は町役を勤める者である,というような用語法が生じることになるのである。
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世界大百科事典(旧版)内の町役の言及

【町役】より

…日本近世の町人が,その地縁的共同体である町(ちよう)を介して勤めた役負担の総称。町役としてくくられる諸負担としては,(1)国家や領主権力への役負担や音信礼,(2)その町人が所属する町の共同体諸経費,(3)当該の町が属する都市の町方全域(惣町)や,その部分(組合町)など,広域の都市行政諸経費などがあるが,本来的には,(1)が町役の原義である。この国家や領主権力への役負担などの中心は,町人足役(ちようにんそくやく)と,伝馬役(てんまやく)とである。…

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