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異種間臓器移植 いしゅかんぞうきいしょく

百科事典マイペディアの解説

異種間臓器移植【いしゅかんぞうきいしょく】

異なる種類の動物の間で,臓器を移植すること。臓器のほか,組織や細胞の移植も含めて〈異種間移植〉ともいう。主に欧米で行われており,ブタやヒヒから臓器などを取り出して人間に移植したり,ブタの心臓をサルに移植するケースなどがある。 米国では,慢性的なドナー(臓器提供者)不足で,移植手術を受けられないために,年間30万人が死亡している。これを解消するために,臓器の大きさが人間に近い動物から臓器提供を受けることで,患者の命を救うと考えられたのが,この異種間臓器移植である。 1960年代にチンパンジーやヒヒの腎移植が行われ,1990年代にはブタやヒヒの肝臓がB型肝炎患者らに移植されたが,いずれも患者は拒絶反応などで死亡した。拒絶反応は移植された臓器を体が〈異物〉とみなすために起こるもので,移植手術が克服すべき最大の課題である。 最近では,異種間の拒絶反応を解消するために,人間の遺伝子をブタに組み込んで,人間と見分けがつかないようにする,といった研究も行われている。さらには,移植を受ける患者に放射線照射や骨髄移植をして免疫反応を抑える方法なども試行されている。 ここ数年では,異種間移植はエイズなど難病の治療方法としても注目されている。米国ではFDA(食品医薬品局)の監視のもとに,数多くの臨床試験が進行中である。 たとえば,ヒヒはエイズウイルスに感染しないため,ヒヒの骨髄を人間のエイズ患者に移植することで免疫力が高まると期待されている。ただ,こうした治療はまだ試行錯誤の段階で,1995年に米国の男性エイズ患者がヒヒの骨髄移植を受けたところ,2週間で拒絶反応が起きたため,骨髄をすべて抜き取る処置を行っている。 このほか,ブタの胎児の神経細胞をパーキンソン病の治療に使ったり,インシュリンを分泌するブタの細胞をカプセルに入れて,糖尿病患者に投薬しているケースもある。 動物から動物への異種間移植を通じて,人間への応用も研究されている。1996年,米ペンシルベニア大学獣医学部のグループは,ラットからマウスへ,精子をつくる臓器を移植したところ,このマウスがマウスの精子をつくることに成功した。将来的には,〈代理父〉として不妊治療への道も考えられる。 さまざまな応用が期待される一方で,異種間臓器移植には検討すべき課題も多い。たとえば,ドナーとなる動物に何らかの病原菌があれば,移植によって人間に感染する危険性があり,こうした病原菌が人類に蔓延(まんえん)するのを防ぐ方法を確立しなければならない。このため,1996年,FDAは感染防止のほか,異種間臓器移植を実施する医師や医療施設の規準などのガイドラインを定めている。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

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