発見法(読み)はっけんほう

改訂新版 世界大百科事典 「発見法」の意味・わかりやすい解説

発見法 (はっけんほう)

ヒューリスティックスheuristicsの訳語で,〈発見〉に資する思考法ないし技法をいう。発見には,〈事実の発見〉と〈概念の発見〉と〈法則の発見〉と〈理論の発見〉の四つの層が区別される。このうち〈事実の発見〉は,レントゲンによるX線の発見などのように偶然の要素が介入することも多い。これに対し,〈概念の発見〉は,たとえば重力や電子の概念のように,それについての理論の発見と相即的であることが多い。そこで通常〈発見法〉は,主として法則や理論の発見についていわれる。従来論理学において演繹法と帰納法がとり上げられているが,このいずれも発見を目ざす推論ではない。発見に関係する推論は,仮説を提起する〈発想〉であり,これは通常の形式論理学の枠内に入らず従来無視されてきた。しかし歴史的にもすでにアリストテレスは,〈演繹synagōgē〉と〈帰納epagōgē〉のほかに〈還元apagōgē〉をとり上げており,C.S.パースはこれを〈アブダクションabduction〉と訳して,その仮説提起的な発見的思考の意義を強調していた。

 こうした発見法としての発想の諸型として,〈類推〉〈普遍化〉〈極限化〉〈システム化〉などがあると考えられる。類推とは,既知のaとa′との間にある本質的関係があると考えられる場合,aとbとの関係に対応する関係をa′とb′との間に考え,既知のbと類比的に未知のb′を発想することである(図参照)。

C.ダーウィンの自然淘汰の考えが人為淘汰の考えから類比的に発想されたのも,またド・ブロイ波動力学波動光学から類比的に発想されたのも,こうした類推の構造による。普遍化とは,与えられた複数の既知の理論を,ある観点から統一的に把握しうる,より一般的な理論をつくることを意味する。ニュートンの万有引力理論が,ガリレイにより与えられた地上の運動法則とケプラーによって樹立された天体の運動法則を統合することによりつくり出されたこと,またアインシュタインの特殊相対性理論が力学マクスウェルの電磁気学をローレンツ変換により統合することにより得られたことなどが,この例である。極限化とは,経験的事実の理想的極限を考えて,そこに法則や理論を発想するもので,ガリレイの〈慣性の法則〉が,物体の斜面上の運動の極限としての斜角零の場合を考え,その理想的状態で発見されたことなどがこれにあたる。システム化とは,多くの事実をある観点から一つのシステムとして関係づけて分類し,そこに法則性を見いだすもので,メンデレーエフによる周期律の発見などがその典型である。日本でもこうした発見法がさまざまな創造の技法として開発されているが,そのうち市川亀久弥による〈等価変換法〉は類推を独特な形で発展させたものであり,川喜田二郎の〈KJ法〉はシステム化の独自な技法とみることができる。
発見
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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