日本大百科全書(ニッポニカ) 「皮翼類」の意味・わかりやすい解説
皮翼類
ひよくるい
flying lemurs
哺乳(ほにゅう)綱皮翼目に属する動物の総称。この目Dermopteraは、東洋区特産のヒヨケザル科と、北アメリカの第三紀暁新世から始新世に知られるプラギオメネ科などの化石種だけからなる。体側に飛膜があり、木から木へ滑空するところは齧歯(げっし)類のムササビに似るが、四肢が長いため飛膜がはるかに大きい。飛膜はあご側から発して前足の第1指に達し、第5指から後足の第1指、さらに第5指から尾の先端に達するほか、5本の指間にも指の先端に達する水かき状の膜があり、コウモリ類の飛膜に酷似するが、上下面とも毛で覆われている。門歯は上顎(じょうがく)の側方に2対、下顎に3対ある。下顎のものは多数の小葉に分かれて櫛(くし)状を呈し、シカやウシのように舌で葉をつかんで切り取るのに適する。臼歯(きゅうし)は食虫類に類似し、多数の鋭い突起を備える。胃は単一。大腸は、ほかのほとんどの哺乳類と違って小腸よりも長く、盲腸がきわめて大きい。精巣は陰嚢(いんのう)に降下する。乳頭が胸に限られること(ただし2対)、陰茎が懸垂性であること、1腹1子で子を胸に抱いたまま滑空すること、胎盤が円盤状のことなどは翼手類に似ていて、明らかに両者は近縁の関係にある。夜行性で果実や葉を主食とし、ナマケモノのように枝から四肢でぶら下がって休息する。
[今泉吉典]