翻訳|bats
哺乳(ほにゅう)綱翼手目に属する動物の総称。この目Chiropteraの仲間は、同綱真獣亜綱に含まれ、前肢が長く伸びて翼になり、自力で飛翔(ひしょう)する。現生種には2亜目19科約950種があり、極地以外の世界中に分布する。前足の第1指以外の長く伸びた指の間、および第5指と後肢の間には伸縮自在の皮膚の薄膜(飛膜)があって翼を形成するほか、多くは後肢と尾の間にも同様の膜(尾膜または腿間(たいかん)膜)がある。後足は外後方に向かい、鋭い鉤(かぎ)づめを備えた5指がある。胸骨には竜骨突起があって翼を動かす筋肉が付着する。夜行性で、多くは群生し、体温が活動時には恒温性であるが、休息時に変温性に変わってエネルギーを節約する異温性のものが多い。1産1子、まれに数子。陰茎が懸垂性で胎盤が円板状、乳頭が胸に1対しかないのは霊長類、皮翼類に等しく、これらの類とともに食虫類から分化したらしいが、北アメリカとヨーロッパの第三紀始新世の最古の化石も、すでに完全な翼を備えていて、移行型は知られていない。前肢の第1・第2指に鉤づめをもつ大翼手亜目(オオコウモリ科のみを含む)は果実、花粉などを食べ、旧世界の熱帯に分布する。翼開長2メートル、体重1.5キログラムのサモアオオコウモリから翼開長30センチメートル、体重15グラムのシタナガフルーツコウモリまであり、花粉の媒介、種子の散布を助けるものが多い。前肢には第1指にしか鉤づめがない小翼手亜目のものは多くは虫食性で、超音波を発して獲物や障害物を探知しながら飛翔する。ヘラコウモリ科のチスイコウモリモドキのように翼開長1メートル、体重200グラムに達する大きなものもあるが、多くは小形で、タイのブタバナコウモリは翼開長15センチメートル、体重1.5グラムしかなく、最小の哺乳類として知られる。新世界特産のものに果実食や肉食のヘラコウモリ科、血液食のチスイコウモリ科、魚食のウオクイコウモリ科など7科、旧世界固有のものにキクガシラコウモリ科、カグラコウモリ科、ブタバナコウモリ科など7科、新旧両世界に分布するものにオヒキコウモリ科、サシオコウモリ科、ヒナコウモリ科、ニュージーランド固有のものにツギホコウモリ科がある。
なお、日本では2003年(平成15)11月5日から新興感染症(ニパウイルス感染症、リッサウイルス感染症)および狂犬病の国内への侵入防止を目的として、すべての翼手目の国内への輸入を禁止している。
[今泉吉典]
学◆Chiroptera 英◆chiropterans, bats
翼手目に属する哺乳類で,コウモリの仲間のこと。真の飛行を獲得した唯一の哺乳類で,前肢が翼に変化している。前肢は上腕骨と橈骨が伸長し,さらに第1指以外の中手骨・指骨も著しく伸長して飛膜の支柱となっている。飛膜は体側をのびて後肢に達し,さらに後肢と尾の間にみられることもある。第1指のみ短く,先端は鉤爪(一部の種類は第2指にも)。後肢は貧弱で歩行に適さず,主に物につかまるのに使用。一般に夜行性で,耳介は大きく聴覚は鋭敏で,自分の出す超音波の反射音を聞いて暗闇を飛行。目は退化する傾向がある。一部の切歯や第1小臼歯を除いて歯は全数そろっている。一般に大臼歯にはW字形の隆線がみられる。現生は約900種で,大翼手亜目(Megachiroptera)と小翼手亜目(Microchiroptera)に区分される。前者は,現在,旧世界と太平洋の熱帯~亜熱帯に分布する果実食の比較的大型のコウモリで,種類は少ない。体の構造はより原始的であるが,歯は特殊化している。化石資料は乏しく古第三紀に2属のみ。後者は,現在,全世界に広く分布して繁栄している。大部分は昆虫食であるが,魚食性・吸血性の種もある。化石は比較的多く,最古の翼手類であるイカロニクテリス(Icaronycteris,始新世前期)は現在の小翼手亜目と酷似した骨格をもつ。翼手類は原始的な食虫類に由来すると考えられているが,前記のことから,翼手類の初期進化は比較的急激に起こり,その後の変化は比較的緩慢であったと考えられる。
執筆者:河村 善也
出典 平凡社「最新 地学事典」最新 地学事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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→コウモリ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…後肢は前肢に比して小さいが,外・後方に180度に回転でき,飛翔と地上での運動の両方が可能である。耳介は発達し,小翼手類の多くは耳介の前にサーベルやキノコに似た耳珠(じしゆ)という突起がある。目は大翼手類では大きいが,それ以外では小さい。…
※「翼手類」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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