日本大百科全書(ニッポニカ) 「直接製鉄法」の意味・わかりやすい解説
直接製鉄法
ちょくせつせいてつほう
鉄鉱石から比較的低温で鉄を半溶融または固体の状態で還元する製鉄法。現在の製鉄法の主流である高炉‐酸素転炉法は、いったん溶銑をつくり、その後酸化し適当な組成の鋼をつくる間接製鋼法であり、これに対し直接という表現を用いている。高温を得る技術や耐火物が未発達な時代は直接製鉄法により鉄をつくっていたが、産業革命以後、大量生産に適する間接製鋼法にとってかわられた。しかし近年、大型高炉に必要なコークス用の強粘結炭を産出せず、還元ガスの豊富な地域、小規模の鉄鋼生産で足りる地域、あるいはスクラップに相当する鉄源を必要とする地域で本法が顧みられ、多くの工場が操業を始めている。とくに中南米、中近東、東南アジアなどの発展途上国での今後の伸びが期待される。固体還元剤を用いるロータリーキルン法、還元ガスを用いるシャフト炉法、レトルト炉法、流動層法、低品位の鉱石、石炭を用いる方法なども行われてきている。主として低温還元であり、硫黄、リンなどの不純物も少なく、現在各方法とも技術改良が続けられている。直接製鉄法では高炉法のような還元時の脈石のスラグ化、分離が不可能であるので、鉄分65%以上の高品位ペレットpellet(10~20ミリメートル程度の球状に丸めたもの)や塊鉱石を用い、金属化率90%以上の還元鉄として、電気炉による製鋼原料とされる。
日本では還元用のガス、電力の価格の面から直接製鉄法は適さないが、蓄積された技術を基に海外各地の工場の建設、操業に協力している。
[井口泰孝]