資金の貸借において、資金の貸し手と借り手との間に金融機関が介在せず、借り手の発行する本源的証券(株式、社債、手形、証書など)を貸し手が直接買い取ることにより、資金調達が行われる金融方式をいう。これに対し、貸し手と借り手との間に金融機関が介在する場合を間接金融という。直接金融はたいていの場合、証券市場を通じて行われ、証券業者が仲介するが、借り手の発行する証券も、貸し手の供給する資金もその性質は不変であり、間接金融の場合とは異なる。直接金融と間接金融のいずれの方式をとるかは、その国の経済発展、金融制度、資本蓄積の程度によってさまざまであるが、日本においては欧米諸国と異なり、第二次世界大戦後は直接金融の比重が著しく低かった(約1割程度)。日本では企業の資金調達面でのコストが間接金融よりも割高であること(株式や社債は発行費用と配当・利子がかかる)や、個人の金融資産選択が流動性・安全性第一であることの結果であろう。近年、国債の大量発行や金融自由化のなかで資金調達の証券化が進展し、また企業金融の資本市場へのシフト(とくに大企業の株式市場を活用した資金調達であるエクイティファイナンスなど)などにより、直接金融の比重が高まっているが、中小企業の資金調達はいまだ間接金融依存度が高い。最近は金融機関が貸出債権を資本市場で売却する市場型間接金融も発展し、金融仲介の仕組みも複雑化している。
[村本 孜]
『鈴木淑夫著『現代日本金融論』(1974・東洋経済新報社)』▽『山下邦男著『金融制度』(1979・東洋経済新報社)』▽『原司郎編『金融論』(1980・有斐閣)』▽『日本銀行金融研究所編『新版 わが国の金融制度』(1995・日本信用調査)』▽『鹿野嘉昭著『日本の金融制度』第2版(2006・東洋経済新報社)』
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(吉川満 (株)大和総研常務理事 / 2007年)
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