本居宣長(もとおりのりなが)の古道論書。一巻。1771年(明和8)稿本(『直霊』)が成り、のち彼の主著『古事記伝』の総論の一部としてその第一巻に収められた。賀茂真淵(かもまぶち)の『国意考』と並んで復古神道(古学神道)を代表する書である。日本の古代こそが平和と人間性の完全な開花が実現した理想世界であり、それは神々の計らいを信じ、日神天照大神(あまてらすおおみかみ)を祖神とする代々の天皇の統治に随順した古代人の生き方によってもたらされたものであるとし、この古代人の姿こそが真の神道であると説く。それに対して、儒教や仏教は人間がその限りある知恵をもってつくりだしたものにすぎず、人情に反するばかりか、人間の本性をもゆがめてしまうとして激しくこれを排斥している。
[高橋美由紀]
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本居宣長(もとおりのりなが)の国学書。第2稿の題名は「道云事之論」。数度の推敲をへて1771年(明和8)成稿,90年(寛政2)刊行の「古事記伝」初帙の首巻に収められ流布した。「古事記」研究の方法論というべき書で,同時に宣長の古道観をもっともよく示している。日本の上代には「たゞ物にゆく道」があっただけで,それを儒教の道徳観に支配された外来の道と区別するため,便宜上「神道」と名づけたという。また,世の禍福善悪はすべて神の所為で,人為の埒外とするところなどが特色。元来,太宰春台の「弁道書」における神道批判に対する反論を動機とするともいわれるが,その漢意(からごころ)批判の舌鋒は,さらに市川匡麿(たずまろ)の「末賀能比連(まがのひれ)」をはじめ,漢学家の批判を招いた。「岩波文庫」「本居宣長全集」所収。
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