相輪(読み)ソウリン

デジタル大辞泉 「相輪」の意味・読み・例文・類語

そう‐りん〔サウ‐〕【相輪】

五重の塔など仏塔の最上部にある金属製の部分。下から露盤伏鉢ふくばち請花うけばな九輪くりん水煙竜舎りゅうしゃ宝珠で構成される。九輪だけをさしてもいう。インドの仏塔の傘蓋さんがいが発展したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「相輪」の意味・読み・例文・類語

そう‐りんサウ‥【相輪】

  1. 〘 名詞 〙 古くは仏塔の最上部にある塔身の上の覆鉢(ふくばち)に立てられたもので、一ないし一三の重層よりなるもの。日本では塔の最上部におかれる青銅または鉄製尖塔で、一般に九輪(くりん)という。下から露盤・覆鉢(ふくばち)請花(うけばな)・九輪・水煙・龍車(りゅうしゃ)・宝珠の七つの部分からなる。
    1. 相輪〈奈良県法隆寺五重塔〉
      相輪〈奈良県法隆寺五重塔〉
    2. [初出の実例]「相輪者是乃俗間所謂九輪也」(出典:寂照堂谷響集(1689)一)
    3. [その他の文献]〔説一切有部毘奈耶雑事‐一八〕

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改訂新版 世界大百科事典 「相輪」の意味・わかりやすい解説

相輪 (そうりん)

九輪(くりん)ともいう。仏塔最上層の屋頂に立つ最上端部。青銅製,鉄製が多く,石塔,瓦塔では石製,瓦製がふつう。下から方台状の露盤(ろばん),倒椀形の伏(覆)鉢(ふくばち),ついで請(受)花(うけばな)と重ね,柱となる刹管さつかん)を立てて宝輪を九つとりつける(九輪)。さらに上に,透彫の水煙(すいえん)4枚を放射状に配し,その上に竜車(りゆうしや),最上端部に宝珠(ほうしゆ)をおく。日本の相輪の全長は,塔総高の3分の1から4分の1を占める長大なものが多い。中心には塔の心柱を通す。古くは請花が彫込みをつけず平頭形のもの,宝輪が八輪のもの(当麻寺東西三重塔),水煙,宝珠のかわりに舎利瓶(しやりへい)(水瓶(すいびよう))に宝傘を載せたもの(宝生寺五重塔)もあった。多宝塔では水煙,宝珠ではなく,請花を重ね火焰宝珠をおく。相輪の原形はインドのストゥーパが中央アジアを通って中国に伝わり,基壇,土饅頭形の墳丘,平頭,宝傘という構成が,露盤,伏鉢,請花,九輪に変形し,木造高楼上に安置された。相輪自体がストゥーパを意味しており,相輪のみを地上に建てた相輪橖(塔)(輪王寺)もある。古くは複数の相輪をもつ塔(長谷寺千仏多宝塔銅板など)もあった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「相輪」の意味・わかりやすい解説

相輪
そうりん

仏塔の屋上、心柱の頂部にある青銅製あるいは鉄製の飾り。基本形は七つの部分からなり、下から露盤(ろばん)、伏鉢(ふくばち)、受花(うけばな)(請花(うけばな))、九輪(くりん)、水煙(すいえん)、竜車(りゅうしゃ)、宝珠(ほうじゅ)と重ねられ、受花から宝珠に至るまでは檫管(さっかん)が心柱の周りを覆って取り付けられている。相輪の形はインドのストゥーパ(仏塔)を象徴化したもので、ストゥーパの円筒形の台基が露盤として表され、墳丘が伏鉢、平頭が受花、傘蓋(さんがい)が九輪、そして傘竿(さんかん)が檫管に相当する。相輪のなかで水煙は檫管の四面に取り付けられて目だつので、もっとも意匠を凝らす。有名なのは奈良薬師寺東塔の、雲中に遊ぶ天人の水煙や、京都醍醐(だいご)寺五重塔の宝鐸(ほうたく)を下に吊(つ)るした火炎状の水煙である。奈良室生(むろう)寺五重塔では九輪上に水煙がなく、傘蓋のある宝瓶(ほうへい)がこれにかわる。また、奈良當麻(たいま)寺の東塔と西塔では、九輪が八輪分しかなく珍しい。一方、多宝塔では、九輪上には水煙を飾らず、2ないし3段重ねた華盤(かばん)と、その上に火炎の巡る宝珠を置く相輪となり、華盤から屋根隅に宝鎖(ほうさ)が垂れ下がる。

[工藤圭章]


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百科事典マイペディア 「相輪」の意味・わかりやすい解説

相輪【そうりん】

仏塔の頂上の飾りで,インドの後期ストゥーパに起源。木造塔では青銅製,鉄製が多い。構造は伏盤,伏鉢,請花,九輪(宝輪),水煙,竜車,宝珠からなり,塔の全高の3分の1程度が普通。
→関連項目宝塔

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「相輪」の意味・わかりやすい解説

相輪
そうりん

仏塔の最上部に取付けられる金具の総称。五重塔,三重塔などの木造層塔では,下から露盤 (ろばん) ,伏鉢,受花 (請花) ,九輪,水煙,竜車 (りゅうしゃ) ,宝珠 (ほうじゅ) の7部分から成る。塔の原型であるストゥーパは相輪の部分だけであった。古代には相輪を露盤といった。

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世界大百科事典(旧版)内の相輪の言及

【五重塔】より

…しかし,塔の建立は功徳とされ,平安時代には多数の仏塔が生まれ,これを巡礼する行も広まった。外観は基壇,塔身,相輪からなる。中央に心柱(しんばしら)または刹柱(さつちゆう)が独立し,その上部が相輪となる。…

【天蓋】より

…当時インドの王侯や貴族は炎暑や熱風,あるいは塵埃を避けるため,従者や下僕に傘蓋(さんがい)をかざさせたもので,貴人の外出には必需の品であった。サーンチーの仏塔をはじめ,多くの仏塔の頂上に2重,3重,あるいは5重,7重と円板を重ねたように見えるものは,多くの在俗の信者たちが寄進した傘を一木の刹(さつ)に連らね,これを頂上にかざしたものであるが,日本ではこれを相輪,九輪と呼ぶ。これもいわば天蓋の一種,あるいはその起源的なものといえる。…

【塔】より

…バウハウス時代のミース・ファン・デル・ローエによる鉄とガラスの摩天楼プロジェクト(1922)は,1950年代以後に現実のものとなり,明快な超高層建築を出現させた。教会堂建築【長尾 重武】
【中国】
 中国に仏教が伝えられたのは漢代であるが,建築にインド系の新要素が導入されたことを示す最古の例証は,《三国志》に,後漢時代末に笮融(さくゆう)が徐州に建てたと見える浮屠(ふと)祠で,金色の仏像をまつり,九重の銅槃(どうばん)からなる相輪を掲げた楼閣であった。浮屠(または浮図)は仏陀の転訛で,のちにはもっぱらストゥーパstūpaを音写した率都波の訛略である塔の名で呼ばれる建築類型を指す。…

【仏教美術】より

…これに対してクシャーナ朝の垂直に重層化する方式の仏塔は,西域をへて中国に伝来する。 中国に入ったストゥーパは,中国古来の楼閣建築と結合して層塔となり,最上部に小型の覆鉢が載せられ,その上に傘蓋が高く延びて相輪となる。層塔ははじめ浮屠祠(ふとし)と呼ばれ,漠然と仏堂とみなされたため,初重に仏像が置かれたが,4,5世紀に舎利信仰が高まり,仏堂と分離し,層塔ははじめて塔として独立し,これより堂塔の具備する仏教寺院に発達した。…

※「相輪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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