改訂新版 世界大百科事典 「真正極楽寺」の意味・わかりやすい解説
真正極楽寺 (しんしょうごくらくじ)
京都市左京区にある天台宗の寺。山号は鈴声山。俗に真如堂として有名。当初は天台宗,室町時代は浄土宗,1693年(元禄6)再び天台宗に改宗。992年(正暦3)比叡山の戒算が,一条天皇の母東三条院藤原詮子の発願で,延暦寺常行堂の阿弥陀如来像を現寺地近くの神楽岡(かぐらおか)にあった女院の離宮に移し,寺院に改めたのが起源という。朝幕の保護のもと堂塔伽藍を整備して天台の名刹として栄えたが,1468年(応仁2)兵火で全焼,寺運はまったく衰えた。のち,いく度も寺地をかえたが,1693年寺基を旧址の南西,いまの寺地に移して堂宇を再建,現在の堂塔のほとんどがこの時期以降に完成した。本尊阿弥陀如来立像を安置する本堂は,正面7間,単層,本瓦葺きの大建築で,真如堂とも呼び,これが寺の俗称となっている。このほか,元三大師堂,三重塔,三千仏堂,薬師堂,吒枳尼天(だきにてん)堂,県井(あがたい)観音堂,新長谷観音堂,庫裏などの諸堂および塔頭(たつちゆう)子院8院がある。毎年11月5日から10日10夜にわたって行われる〈お十夜〉は,その盛大さで全国に有名。また什宝のうち《真如堂縁起絵巻》は1524年(大永4)の作で,詞書は後柏原天皇,尊鎮法親王,三条西実隆らの筆,絵は掃部助(かもんのすけ)久国で重要文化財。なお,境内の墓地には歌人冷泉為村,画家海北友松,俳人向井去来,豪商三井一族など著名人の墓が多い。
執筆者:藤井 学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報