(1)古くは弓術の練習場をさし、この意味では弓場(ゆば)、的場(まとば)ともいう。武家では長さ弓杖(きゅうじょう)33丈(約76メートル)、幅は同じく1丈(約2.3メートル)と決められ、射場には垜(あずち)を築き、これに的をかける。矢場は城内や屋敷内、または人家の少ない郊外に設けられた。(2)江戸時代には、矢場は料金をとって楊弓(ようきゅう)(遊戯用小弓)を射させた遊戯場をさす。これは江戸での呼び名で、京坂では一般に楊弓場といった。楊弓は古くから行われ、主として公家(くげ)の遊戯であったが、江戸時代に民間に広がり、日常の娯楽として流行をみた。寛政(かんせい)(1789~1801)のころには寺社の境内や盛り場に矢場が出現、矢場女(矢取女)という矢を拾う女を置いて人気をよんだ。間口(まぐち)1、2間のとっつきの畳の間(ま)から7間(けん)半(約13.5メートル)先の的を射る。的のほか品物を糸でつり下げ、景品を出したが、矢取女のほうを目当ての客が多かった。的場の裏にある小部屋が接客場所となり、矢場とは単なる表看板で、私娼(ししょう)の性格が濃厚になった。1842年(天保13)幕府はこれを禁止したが、ひそかに営業は続けられ、明治20年代まで存続した。のちに、矢場の遊戯場の面は鉄砲射的に、私娼的性格は銘酒屋に移行したものもある。
[稲垣史生]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…江戸期~明治期に市中で楊弓を遊ばせた遊戯場。江戸では矢場と俗称した。射た矢を集めるという名目で矢拾女(矢場女)がおり,客に接して向き合い,右手に弓を持ち,左手で巧みに射たという。…
※「矢場」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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