石井真木(読み)いしいまき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「石井真木」の意味・わかりやすい解説

石井真木
いしいまき
(1936―2003)

作曲家。舞踊家石井漠(ばく)の三男として東京に生まれる。池内友次郎(いけのうちともじろう)(1906―91)、伊福部昭(いふくべあきら)に師事したのち、1958年(昭和33)ドイツへ渡りベルリン音楽大学作曲科に入学、作曲をボリス・ブラッハーに、十二音技法を音楽学者のヨーゼフ・ルーファーJosef Rufer(1893―1985)に師事する。60年、ベルリンで開かれた「日独修好100年記念コンサート」で『小オーケストラのための7章』が初演される。62年に帰国記念として「石井真木作品発表会」を開催。以後、日本とドイツを拠点に創作活動を行った。

 セリー技法による『四つのバガテレン』(1961)、不確定性を取り入れた『アフォリスメン』(1963)、テープ音楽『波紋』(1965)など、第二次世界大戦後の欧米の前衛技法による作品を発表したのち、雅楽とオーケストラのための『遭遇Ⅱ』(1971)、琵琶(びわ)、ハープ尺八フルート、オーケストラのための『ポラリテーテン』(1973)、日本太鼓群とオーケストラのための『モノプリズム』(1976。第25回尾高賞受賞)など、邦楽器に前衛音楽手法でアプローチした作品を発表。その立場から1980年代以降は、バレエのための『輝夜姫(かぐやひめ)』(1985)、オペラ『閉じられた舟』(1999)などの舞台作品を発表した。1976年(昭和51)から現代音楽祭「パンムジーク・フェスティバル」の主宰をはじめ、音楽祭の企画・構成も手がけた。1980年ベルリン芸術祭優秀賞受賞、99年には紫綬(しじゅ)褒章を受章した。

[楢崎洋子]

『岩城宏之・石井真木他著『行動する作曲家たち――岩城宏之対談集』(1986・新潮社)』『安永徹・石井真木他著『音楽って何だろう――安永徹対談集』(1990・新潮社)』『石井真木編著『西の響き・東の響き 石井真木の音楽――二つの音世界からの創造』(1997・音楽之友社)』『日本芸術文化振興会、国立劇場調査養成部芸能調査室監修・編『現代の日本音楽第3集 石井真木作品』(1999・春秋社)』

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20世紀日本人名事典 「石井真木」の解説

石井 真木
イシイ マキ

昭和・平成期の作曲家,指揮者



生年
昭和11(1936)年5月28日

没年
平成15(2003)年4月8日

出生地
東京

学歴〔年〕
ベルリン音楽大学作曲科〔昭和36年〕卒

主な受賞名〔年〕
ヴェネチア市賞〔昭和48年〕,尾高賞(第25回)〔昭和51年〕,ベルリン芸術祭優秀賞〔昭和55年〕,中島健蔵音楽賞(最優秀賞)〔昭和60年〕,ドイツ批評家賞(音楽部門 第37回)〔昭和63年〕,京都音楽賞(大賞 第5回)〔平成2年〕,レコード・アカデミー賞(第28回)〔平成2年〕,芸術作品賞(レコード部門 平2年度)「協奏と交響」,レコード・アカデミー賞(第31回)〔平成5年〕「輝夜姫」,日本文化芸術振興賞(日本伝統文化振興賞 第6回)〔平成11年〕,紫綬褒章〔平成11年〕

経歴
日本のモダンダンスの創始者として知られる舞踏家・石井漠の三男で、兄は作曲家の石井歓。伊福部昭に師事し、昭和33年ドイツに留学。ベルリン音楽大学で作曲を学び、12音技法など最先端の現代音楽技法を取り入れた作品を次々に発表。1960年代からは声明や和太鼓など日本の古典音楽や東南アジアのガムラン音楽に傾倒して、“2つの音の世界からの創造”をテーマに西洋音楽と日本の伝統音楽を融合させた独自の音楽世界を展開、ヨーロッパと日本を舞台に国際的に活躍した。主な作品に「遭遇II」「モノプリズム―日本太鼓とオーケストラのための」「彼方へ―ピアノ独奏」「蛙の声明―草野心平の詩に拠る」「解脱―笛とオーケストラのための」「響層」「祇王」「打楽器群とオーケストラのための『響層』」、バレエ「輝夜姫」などがある。また、58年には反核コンサートの世話人を務め、60年からは“東京の夏”音楽祭の企画・構成を担当した。平成10年長野五輪の入場行進曲を他の作曲家と連作。11年日本とオランダの交流400年を記念して、オランダ政府からの委嘱で初オペラ「閉じられた舟」を作曲、ヨーロッパ公演を経て、12年日本で上演された。日中友好合作現代音楽祭の企画・構成も手がけた。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「石井真木」の解説

石井真木 いしい-まき

1936-2003 昭和後期-平成時代の作曲家。
昭和11年5月28日生まれ。石井漠の3男。石井歓の弟。池内友次郎,伊福部昭,ボリス=ブラッハーらに師事。口音技法,電子音楽から雅楽までの技法を導入した作品を発表。昭和42年日独現代音楽祭を入野義朗らと組織。51年「日本太鼓とオーケストラのためのモノプリズム」で尾高賞。作品に「響層」「輝夜姫」など。平成15年4月8日死去。66歳。東京出身。ベルリン音大卒。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

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