ハープ(読み)はーぷ(英語表記)harp 英語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハープ」の意味・わかりやすい解説

ハープ
はーぷ
harp 英語
harpe フランス語
Harfe ドイツ語
arpa スペイン語
arpa イタリア語

三角の枠に多くの弦を張った形の撥弦(はつげん)楽器。今日、演奏会などで普通用いられるものはダブル・アクション・ハープとよばれ、高さ約1.7メートル、弦数は通常47本の大形ハープである。支柱台座、響板および共鳴胴ネック、弦からなり、台座から演奏者側に斜めに伸びた響板および共鳴胴の下部には、音を明快にするための穴があけられている。音域はC1ーG6と広いが、最低・最高音域はあまり有効ではない。1オクターブ当り7本の弦しかないが、7幹音の各音名に対応したペダルが台座に設けられ、ペダルが支柱内部の機構を経て、ネック内の金具と連動して半音階の音すべてを出すことができる。金具は各弦に上下2個つけられており、ペダルを2段踏み込むと上下二つが弦を押さえて弦長を短くし♯音、1段踏むと上のみが弦を押さえ♮音、踏まないと開放弦で♭音が出る仕組みになっている。一方、1オクターブにつき7本の弦しかないことで、ハープに特有の奏法であるグリッサンド和音を鳴らすことが可能になる。また、C音の弦には青く、F音の弦には赤く着色することで演奏の便宜が図られている。

 楽器分類上は、弦の並んでいる面と共鳴板とが直角である楽器の属名で、ハープ属の起源は紀元前3000年ごろのメソポタミアエジプトにまでさかのぼることができる。分布はアフリカや近東、東南アジアにも及ぶ。アフリカのプリュリアークミャンマービルマ)のサウン、日本の箜篌(くご)などがその代表例である。

 ハープはヨーロッパではとくに中世に広く愛好され、なかでも吟遊詩人にとって重要な楽器であった。しかし、全音階が基本であったため、15世紀末ごろ、音楽に半音がしばしば使われるようになると、リュートチェンバロなどの半音演奏が容易な楽器に押されて、半音の弦の列を加えた二重ハープや、その演奏のむずかしさを解消するための三重ハープがつくられた。のちには、留め金を用い、手操作で音高を半音変化させる機構も考案された。ペダル装置は17世紀終わりに発明されたが、現在のダブル・アクションは、フランスの楽器製作者エラールが1810年にロンドンで特許をとったものである。

[前川陽郁]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハープ」の意味・わかりやすい解説

ハープ
harp

撥弦楽器の1種。柱,ハーモニック・カーブ,共鳴胴から成る三角形の枠に,長さ (音律) の異なる多数の弦が共鳴胴に対してほぼ垂直に張ってある。現在は,弦が 47本で7本のペダルのダブル・アクション・ハープが一般的である。これはペダルの踏みしろが2段になっていて,同名音をペダル操作によって♭,♮,♯音に変音することができる。古代の地中海沿岸では種々の型や大きさのハープがあり,大型のものが前 1200年頃のラムセス3世の墓から出土した。現在でも柱のない小型の古代ハープの名残りが東アフリカやミャンマーなどでみられる。

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