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作曲家。北海道釧路(くしろ)町(現、釧路市)生まれ。少年期を北海道で過ごした伊福部は、アイヌ民族の音楽や、各地方から移住してきた人々の民謡を幼いころより耳にして育った。ギターやバイオリンをたしなみ、15歳のとき独学で作曲を始めた。その後、1932年(昭和7)北海道帝国大学農学部林学科に入学し、1934年早坂文雄、後に音楽評論家となる三浦淳史(あつし)(1913―1997。伊福部の中学時代の同級生)らと、札幌で「新音楽連盟」を組織し、エリック・サティをはじめ、当時の現代音楽を演奏紹介する。またこのころより民族的な色彩の濃い作品を書くようになった。
1935年同大学を卒業。厚岸(あっけし)の森林事務所で林務官を務めるかたわら書き上げた、初めてのオーケストラ作品『日本狂詩曲』は、作曲家アレキサンドル・チェレプニンAlexander Tcherepnin(1873―1945)が主催したチェレプニン賞に主席入選、一躍注目される。また、19歳で書いた作品『ピアノ組曲』が、1938年ベネチア国際現代音楽祭に入選。1943年には『交響譚詩』がビクター管弦楽コンテストに入選、文部大臣賞受賞。
第二次世界大戦後上京し、東京音楽学校(現、東京芸術大学音楽学部)の講師として、1946年(昭和21)から1953年まで管弦楽法を教えた。教え子には芥川也寸志(あくたがわやすし)、黛敏郎(まゆずみとしろう)らがいた。1951年『バイオリンと管弦楽のためのラプソディ』がジェノバ国際作曲コンクール管弦楽の部で入選。ほかにも、『サハリン島先住民の三つの揺籃歌』(1949)、『シンフォニア・タプカーラ』(1954、三浦に献呈)、合唱頌詩(しょうし)『オホーツクの海』(1958)、『ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ』(1961)、ギター曲『古代日本旋法による蹈歌(とうか)』(1967)など、多くの作品を発表した。また、映画音楽の分野でも活躍、『ゴジラ』(1954)、『座頭市(ざとういち)』『コタンの口笛』(ともに1959)など、300本以上の映画音楽を手がけている。『ビルマの竪琴(たてごと)』『鬼火』『真昼の暗黒』(ともに1956)で毎日映画コンクール音楽賞を受賞。
その後も管弦楽、歌曲、バレエ音楽と幅広い作品を発表した。代表的な作品には『SFファンタジー第1番~3番』(1983)、『日本の太鼓 ジャコモジャンコ』(1984)、バレエ曲『サロメ』(1987)、『釈迦(しゃか)』『二十五絃筝(げんそう)のためのトッカータ』(ともに1989)、『二面の二十五絃筝のための日本組曲』(1991、『ピアノ組曲』改作)、『交響的音画 釧路湿原』(1993)、『因幡(いなば)万葉の歌五首』(1995)、2001年(平成13)初演の『二十五絃筝甲乙奏合(こうおつそうごう)交響譚詩(たんし)』などがある。
1973年東京音楽大学の作曲科教授に就任、1976~1987年同学長、その後同大学民族音楽研究所所長となる。彼の教え子からは芥川、黛のほか松村禎三、石井真木(まき)、三木稔など多くの優れた作曲家が輩出しており、指導者としても知られた。
伊福部は単純性・地域性を重視した作曲を続けてきた作曲家である。オスティナート(一定の音型を繰り返す手法)を強調したリズムは、伊福部の音楽を構成する重要な要素であり、テリー・ライリーTerry Riley(1935― )は、伊福部のオスティナートの美学が、自分にもっとも近い音楽のあり方の一つであると述べている。第二次世界大戦後日本の「前衛」音楽主流の作曲界では無視されたりなおざりにされたこともあったが、映画『ゴジラ』の音楽をはじめ、多くの一般的な支持やポスト・モダンの風潮のなかで、1980年代から伊福部昭リバイバルが起きた。1980年紫綬褒章(しじゅほうしょう)、1987年勲三等瑞宝章(ずいほうしょう)受章、2003年文化功労者。
[小沼純一]
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出典 (社)全日本ピアノ指導者協会ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者)について 情報
出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
… 日本では,1910年代後半から20年代初めにかけて山田耕筰が石井漠,小山内薫の協力を得て創作した舞踊詩(《青い焰》《マリア・マグダレーナ》《野人創造》)がある。また第2次大戦後の作品では,伊福部昭(1914‐ )の《サロメ》(1948)と《プロメテの火》(1950),石井歓(1921‐ )の《まりも》(1962),間宮芳生(1929‐ )の《祇園祭》(1963)などが成功している。【後藤 暢子】。…
※「伊福部昭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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