歌舞伎(かぶき)劇。時代物。1幕。浄瑠璃義太夫節(じょうるりぎだゆうぶし)『三浦大助紅梅靮(みうらのおおすけこうばいたづな)』の三段目にあたる。原作は長谷川千四(せんし)、文耕堂合作、1730年(享保15)3月大坂・竹本座初演。石橋山の敗戦後、再挙を図る源頼朝(よりとも)を三浦大助が助け、梶原景時(かじわらかげとき)、畠山重忠(はたけやましげただ)とともに大庭(おおば)三郎兄弟を滅ぼすという筋の五段構成だが、その「星合寺(ほしあいでら)」の段が歌舞伎化されて今日に残った。源氏の侍を婿にもつ青貝師六郎太夫(ろうだゆう)は、婿の軍資金のため、家重代の刀を大庭三郎に売ろうとする。鑑定役を頼まれた梶原景時は試斬(ためしぎ)りをわざと切り損じ、大庭たちが去ったあと、源氏へ心を寄せる本心を六郎太夫に打ち明け、その刀を買い上げて切れ味を示すために石の手水鉢(ちょうずばち)を切る。刀の鑑定、石橋山合戦の物語、手水鉢を切るところなどが見せ場。舞台面は鶴岡八幡宮(つるがおかはちまんぐう)とすることが多く、普通『梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)』の名題を使うが、15世市村羽左衛門(うざえもん)は屋号橘屋(たちばなや)にちなんだ『名橘(なもたちばな)誉石切』の名題で得意芸とした。ほかに、初世中村鴈治郎(がんじろう)、初世中村吉右衛門(きちえもん)もそれぞれ特色ある演技を示し、現代でも多くの俳優が演じている。
[松井俊諭]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
…1730年冬,大坂で歌舞伎に移された。近年の歌舞伎では三段目切の〈石切梶原〉だけが人気を呼び《梶原平三誉石切(ほまれのいしきり)》《名橘(なもたちばな)誉石切》《梶原平三紅梅靮》などの外題でしばしば上演されている。【佐藤 彰】。…
※「石切梶原」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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