石母田正(読み)いしもだしょう

百科事典マイペディア 「石母田正」の意味・わかりやすい解説

石母田正【いしもだしょう】

日本史学者。札幌市に生まれる。1937年東京帝大文学部卒。1948年-1981年法政大学教授。1938年ごろから渡辺義通らと史的唯物論立場で日本の古代中世史を共同研究。第2次大戦中から書きはじめた《中世的世界の形成》(1946年)は,一荘園舞台として,在地領主民衆による古代専制支配の克服過程をダイナミックに描き出したもので,中世を構造的に理解しようとする研究者に大きな影響を与え,戦後歴史学の出発点となった。1971年刊行の《日本の古代国家》は,日本古代国家成立を東アジアの国際関係のなかで論じたもので,日本の歴史研究の一到達点ともいわれている。また民主主義科学者協会・歴史学研究会などの科学運動に積極的に取り組んだほか,国民自身が歴史意識を高めようという国民的歴史運動を提唱,指導した。《石母田正著作集》全16巻が刊行されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「石母田正」の意味・わかりやすい解説

石母田正
いしもだしょう
(1912―1986)

歴史学者。北海道生まれ。1937年(昭和12)東京帝国大学国史学科を卒業し、冨山房、日本出版協会、朝日新聞社などに勤務、1948年法政大学法学部教授となる。戦時下の1944年から執筆した『中世的世界の形成』は、一つの荘園の史実を軸としながら、古代専制支配に対する新興の在地領主、民衆の曲折にみちた歩みを叙述したもので、1946年発表されると大きな反響をよび、戦後の思想界に広い影響を与えた。1956年『古代末期政治史序説』、1971年『日本の古代国家』を発表し、日本古代、中世史を唯物史観の立場から研究して多くの業績をあげた。民主主義科学者協会、日本文化人会議の創設に参加して科学運動でも活躍した。法政大学名誉教授。著書に『歴史と民族の発見』『平家物語』『日本古代国家論』など。1986年1月18日没。

[編集部]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「石母田正」の解説

石母田正 いしもだ-しょう

1912-1986 昭和時代の日本史学者。
大正元年9月9日生まれ。唯物史観の立場から古代・中世史の研究をおこない,昭和23年法大教授となる。戦時下に執筆した「中世的世界の形成」を21年に刊行し,学界に衝撃をあたえる。民主主義科学者協会の創立に参加,「国民のための歴史学」運動をすすめた。昭和61年1月18日死去。73歳。北海道出身。東京帝大卒。著作に「歴史と民族の発見」「日本の古代国家」など。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「石母田正」の解説

石母田正
いしもだしょう

1912.9.9~86.1.18

昭和期の古代・中世史学者。北海道出身。東大卒。法政大学教授。唯物史観にたって天皇制の克服を隠されたモチーフとした名著「中世的世界の形成」を第2次大戦中に執筆。雄大な構想と強靭な論理で貫かれたこの本は,敗戦後の歴史学再建の支柱となった。終始現実の社会や政治をみつめてそこから学び,実践することを重視した。「石母田正著作集」全16巻。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

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