プリル硝安とよばれる多孔性粒状硝酸アンモニウム94%に、引火点50℃以上の油剤を含浸させた爆薬。アンホ爆薬などともよばれる。油剤としては着色した軽油が用いられている。日本では1964年(昭和39)から硝安油剤爆薬の消費が始まった。原料が安価であること、製造工程が簡単であること、中間製品および最終製品が比較的安全であることなどから、用途、使用量は急速に拡大した。その後生産量は安定し、2010年(平成22)における硝安油剤爆薬の日本での生産量は約2.6万トンで、全工業爆薬生産量の約76%である。
硝安油剤爆薬の特長は低価額と安全性である。安全性を保証するために、他の火薬類や鋭感剤となる金属粉を成分とすることが禁じられている。また、6号雷管1本では起爆できないことが義務づけられ、その試験法が定められている。このような安全性を考慮して、硝安油剤爆薬は他の爆薬と異なり重袋(じゅうたい)包装(セメント袋と類似の包装)が許されている。
硝安油剤爆薬は発破孔(はっぱこう)への装填(そうてん)に装填機(ローダー)の使用が許されている。しかし、装填機による装薬では、静電気が発生しやすい。静電気によって電気雷管が暴発した事故が知られている。そのために耐静電気雷管が開発され、現在製造されている電気雷管は、すべて耐静電気雷管である。
ダイナマイトや含水爆薬に比べて爆速が小さく、毎秒約3000メートルである。したがって、硬い岩石を発破するのは不適であるが、ガスの発生量は多いので石灰石のような軟岩の発破採石に適している。細い薬径の装薬では爆轟(ばくごう)(衝撃波を伴う爆発)が中断するおそれがあるので、70ミリメートルあるいはそれ以上の大口径の発破孔が用いられている。装薬比重が高すぎると死圧の現象(ある程度以上の加圧下では爆発しなくなる現象)を呈し伝爆しなくなる。
硝安油剤爆薬は吸湿性があるので、湧水(ゆうすい)のある所での使用には適さない。また、発破のあとガス(後ガス)は有害なので、トンネル内など換気の悪い所での使用には注意が必要である。
[吉田忠雄・伊達新吾]
アンホ爆薬,ANFO爆薬,アンホなどとも呼ばれる。プリル硝安と呼ばれる多孔性粒状硝酸アンモニウム94%に引火点50℃以上の油剤を含浸させたもの。油剤としては軽油が使われている。日本では1964年から使われはじめた。原料が安価であること,製造工程が簡単であること,中間製品および最終製品が比較的安全であることなどから,使用は急速に拡大し,発破用爆薬の65%程度を占めるようになった。
硝安油剤爆薬の特徴は低価格と安全性である。安全性を保障するために,他の火薬類や鋭感剤となる金属粉を含ませることは禁止され,また6号雷管1本では爆発しないことが義務づけられており,そのための試験法が定められている。したがって,この爆薬を確実に爆発させるには伝爆薬が必要である。伝爆薬としてはダイナマイトや含水爆薬が用いられる。このような安全性を配慮して,他の爆薬とは異なり,重袋包装(セメント袋と類似の包装)が許されている。発破孔への装てん(塡)には装てん機(ローダー)の使用が許されている。しかし,装てん機による装薬では,静電気が発生し電気雷管が爆発した事故なども知られているので,耐静電気雷管の使用が勧められている。
硝安油剤爆薬はダイナマイトや含水爆薬に比べて爆速が遅く,約3000m/sである。したがって,硬い岩石を発破するのには不適であるが,ガス発生量は多いので石灰石のような軟岩の発破砕石には適している。細い薬径の装薬では爆ごうが中断するおそれがあるので,70mm程度あるいはそれ以上の大口径の発破孔が用いられている。装てん比重が高くなりすぎると死圧の現象を呈し,伝爆しなくなる。また吸湿性があるので湧水のあるところでの使用には適さない。発破の際の後ガスが悪いので,トンネル内など換気の悪いところでの使用には注意が必要である。
執筆者:吉田 忠雄
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