スラリー爆薬slurried explosiveとも呼ばれる。硝酸アンモニウム,硝酸ナトリウム,水,燃料兼鋭感剤および粘稠剤を成分とした爆薬。1950年代にカナダのファーナムH.E.FarnamとアメリカのクックM.A.Cookの協同研究の結果生まれた新しい工業爆薬である。従来の工業爆薬は耐水性に難点のあるものが多かったが,この爆薬は水を10~20%程度含んでいるために,耐水性は悪くなく,後ガスは良好であり,簡単には着火しないので安全性も高い。爆発威力も硝安油剤爆薬よりも大きいが,標準的なダイナマイトのそれよりも小さいという難点もある。毒性のあるニトログリコールを含まないので,その点はダイナマイトより優れている。最初に作られたこの種の爆薬はどろどろした泥状(スラリー状)で起爆感度が鈍く,大口径の発破孔に流し込んで伝爆薬(ブースター)を用いて起爆した。この種のものは雷管1本では起爆できないので非雷管起爆性capinsensitiveと呼ばれた。その後,ダイナマイトと性状の似た膠質のウォータージェルwater gelが作られ,これは雷管で起爆できるので雷管起爆性capsensitiveと呼ばれて,日本でも使われるようになってきた。含水爆薬の起爆および伝爆性能は薬質内に気泡を含ませることで向上している。現在日本で作られている含水爆薬は,アメリカのデュポン社,ハーキュレス社およびアイレコ社から技術導入されたものである。含水爆薬の一種とみられるが,爆速等の性能改善のためにエマルジョン爆薬の研究が行われている。
執筆者:吉田 忠雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
水を5%以上含有した泥状の爆薬で、スラリー爆薬とエマルション爆薬とに分類される。
スラリー爆薬は、1950年代に開発された新しい型の工業爆薬で、硝酸アンモニウム、水、燃料兼鋭感剤、気泡、粘稠剤(ねんちゅうざい)などを含む。従来、水分は爆薬にとって劣化の原因であったが、この爆薬は水をかなり多量に含んでいるのが特徴である。爆発威力はダイナマイトと硝安油剤爆薬の中間で、あとガス(後ガス)は良好である。安定度、耐火・耐熱性もダイナマイトに比べてよく、衝撃起爆感度は鈍感である。毒性のあるニトログリコールを含まないので薬害の心配は少ない。日本で現在製造されている含水爆薬はゲル状のもので、6号雷管1本で起爆できるので雷管起爆性の含水爆薬である。アメリカで最初に工業化されたのはスラリー状(泥状)の含水爆薬で、雷管では起爆できないので非雷管起爆性とよばれた。現在日本で製造されている含水爆薬は、アメリカのデュポン、ハーキュレスおよびアイレコの各社から技術導入された含水爆薬で、それぞれ燃料兼鋭感剤に特徴をもっている。
エマルション爆薬は、油剤の中に硝酸アンモニウム等の酸化剤の水溶液を分散させた油中水型エマルションからなるゲル状の含水爆薬であり、1970年代から開発が進められ、現在では産業爆薬として広く使用されている。
[吉田忠雄・伊達新吾]
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