翻訳|white lead
炭酸水酸化鉛(Ⅱ)の慣用名。塩基性炭酸鉛ともいう。これを主成分とする白色顔料名でもあり,白鉛とも呼ばれる。化学式2PbCO3・Pb(OH)2。白色六方晶系の板状結晶。比重6.14。油によく溶け隠ぺい力が大きい。400℃に熱すると炭酸ガスを出し一酸化鉛になる。水,エチルアルコールには不溶だが,酸に溶けて炭酸ガスを出し,アルカリにも溶ける。工業的製法は,金属鉛をローラーで薄いリボン状にして蒸室につるし,下に希酢酸溶液を入れた容器をおき,木炭などで加熱して生ずる炭酸ガスと酢酸の蒸気を反応させる方法によるほか,鉛粉を使う方法,鉛板を陽極,銅板を陰極として炭酸ガスを吹き込みつつ酢酸ナトリウム液を電気分解する方法がある。塗料,陶磁器のうわぐすり,塩化ビニル安定剤に用いられる。有毒であるのと,硫化水素により黒変するのが欠点である。
執筆者:新井 吉衞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
炭酸水酸化鉛(Ⅱ)Pb3CO3(OH)2の慣用名。古くは塩基性炭酸鉛ともよび、白鉛、唐土(とうど)ともいう。六方晶系の重い粉末。もっとも古い白色顔料で、亜鉛華、チタン白、硫化亜鉛が使用されるまでは、唯一の、隠蔽力(いんぺいりょく)の大きい顔料として用いられてきたが、有毒かつ有機酸に溶けるため、使用上の制限を受け、生産量は激減した。
一般には、薄鉛板を数多くつり下げた室に、50~70℃の二酸化炭素、空気、酢酸および水蒸気の混合ガスを送り、表面に炭酸水酸化鉛を生成させるドイツ法によるものが、隠蔽力が大きいとされている。
耐光性、耐候性ともに大で、150℃まで安定。二酸化硫黄(いおう)に侵され、硫化水素により黒変する。塗料として用いると、付着性、弾性のよい塗膜をつくるため、木部の下塗り用、外部上塗り用に使用される。
[大塚 淳]
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出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…黄色には酸化鉄から成る黄土と,ヒ素の硫化物の石黄があり,石黄は,雄黄や雌黄などとも呼ばれ強い毒薬としても使われた。白には白土,鉛白などがあり,白土はカオリンを含む陶土で壁画や木彫彩色など各所に古くから使われた。鉛白は塩基性炭酸鉛を主成分とするものだが変色することがあり,絵巻などの古典作品の顔の色が黒く変わっているのを見ることがある。…
…歴史的には,洋の東西を問わず,清浄なもの,白いものを貴び憧れる観念から出発した。白色顔料は地域によって異なるが,白土,貝殻粉,穀粉,鉛白,甘汞(かんこう)などである。鉛白(塩基性炭酸鉛)は紀元前4世紀にギリシアのテオフラストスによって発明されたといわれ,化粧料として使われはじめた。…
※「鉛白」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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