日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫酸ジメチル」の意味・わかりやすい解説
硫酸ジメチル
りゅうさんじめちる
dimethyl sulfate
メタノール(メチルアルコール)と硫酸の中性エステル。ジメチル硫酸とよばれることがあるが、正しい名称ではない。合成法は、(1)発煙硫酸と乾いたメタノールとの反応により硫酸水素メチルをつくり、これを蒸留して硫酸ジメチルに変換する方法、(2)ジメチルエーテルと三酸化硫黄(いおう)との連続反応による方法などがあり、後者は工業的製造法として知られている。
無色の油状液体で、エタノール(エチルアルコール)、エーテルに溶ける。刺激性はないが、きわめて有毒で、吸入あるいは皮膚への付着によって中毒をおこし、呼吸器粘膜の炎症で死に至ることがある。発癌性(はつがんせい)もある。強力なメチル化剤として、フェノールやアルコールのO-メチル化、アミンのN-メチル化、チオールのS-メチル化に広く応用される。有毒で取り扱いにくいので、実験室的には他のメチル化剤に代替される傾向にある。
[廣田 穰 2016年11月18日]