硫酸ジメチル(読み)りゅうさんじめちる(英語表記)dimethyl sulfate

日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫酸ジメチル」の意味・わかりやすい解説

硫酸ジメチル
りゅうさんじめちる
dimethyl sulfate

メタノールメチルアルコール)と硫酸中性エステルジメチル硫酸とよばれることがあるが、正しい名称ではない。合成法は、(1)発煙硫酸と乾いたメタノールとの反応により硫酸水素メチルをつくり、これを蒸留して硫酸ジメチルに変換する方法、(2)ジメチルエーテルと三酸化硫黄(いおう)との連続反応による方法などがあり、後者は工業的製造法として知られている。

 無色の油状液体で、エタノールエチルアルコール)、エーテルに溶ける。刺激性はないが、きわめて有毒で、吸入あるいは皮膚への付着によって中毒をおこし、呼吸器粘膜炎症で死に至ることがある。発癌性(はつがんせい)もある。強力なメチル化剤として、フェノールやアルコールのO-メチル化、アミンN-メチル化、チオールS-メチル化に広く応用される。有毒で取り扱いにくいので、実験室的には他のメチル化剤に代替される傾向にある。

[廣田 穰 2016年11月18日]

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化学辞典 第2版 「硫酸ジメチル」の解説

硫酸ジメチル
リュウサンジメチル
dimethyl sulfate

(CH3O)2SO2(126.13).ジメチル硫酸ともいう.メチルアルコールあるいはジメチルエーテルと発煙硫酸から得られる.無色の油状の液体.融点-27 ℃,沸点188 ℃,76 ℃(2 kPa).1.3322.1.3874.もっとも効果的なメチル化剤の一種である.毒性が強く,皮膚から吸収され,壊死を起こし,粘膜,とくに呼吸器粘膜の炎症を起こす.腎臓肝臓心臓もおかされる.LD50 205 mg/kg(ラット経口).[CAS 77-78-1]

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改訂新版 世界大百科事典 「硫酸ジメチル」の意味・わかりやすい解説

硫酸ジメチル (りゅうさんジメチル)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫酸ジメチル」の意味・わかりやすい解説

硫酸ジメチル
りゅうさんジメチル

硫酸メチル」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の硫酸ジメチルの言及

【エステル】より

…ジカルボン酸のジエステル(中性エステル)は可塑剤として用いられる。 無機酸エステルのうち,硫酸ジメチル(CH3)2SO4は重要なメチル化剤としてよく用いられているが,有毒な液体(沸点187.5℃)であるので取扱いに注意が必要である。これはヨウ化メチルと硫酸銀とを高温で反応させて製造する。…

【硫酸エステル】より

…重い油状の液体で,水には溶けにくいが徐々に加水分解される。ジメチルエーテルとSO3から工業的につくられる硫酸ジメチルdimethyl sulfate(CH3O)2SO2(融点-31.4℃,沸点187.5℃)は,水酸基-OHやアミノ基-NH2をメトキシル基-OCH3またはメチルアミノ基-NHCH3に導くメチル化試薬としてよく用いられる。ただし猛毒で,皮膚からも吸収されるので取扱いには注意を要する。…

※「硫酸ジメチル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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