幸徳秋水(こうとくしゅうすい)著。1903年(明治36)7月朝報社より刊行。社会主義とは何か、という問いに答えて明治社会主義の理論的礎石を据えた記念碑的著作。英文の啓蒙(けいもう)書やマルクス、エンゲルスの英訳本をもとに「稿を代ふること十数回、時を費す半年の久しき」すえに成った。「貧困の原由」から説き起こし、資本主義社会の矛盾を指摘して社会変革の必然の法則を導き出し、社会主義に向けられた非難や誤解に対して反駁(はんばく)を加える。ついで空想的社会主義から科学的社会主義への発展を粗描して現時の社会党の運動方法を論じるが、それは著者がのちに否定した議会主義、普選運動であった。初めて本書で科学的社会主義の大綱が紹介された。
[荻野富士夫]
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…1901年4月の処女出版《廿世紀之怪物帝国主義》では偏狭な愛国心と野蛮な軍国主義を批判し,5月には安部磯雄,木下尚江らと最初の社会主義政党である社会民主党を結成,7月人心の腐敗防止をめざした理想団の形成に参加,さらに12月足尾鉱毒事件に奔走する田中正造の依頼で直訴文を起草するなど,多彩な活動を展開する。社会変革の必然の法則を把握し,社会主義のめざすべき方向とその実現の方法を論じた03年7月刊の《社会主義神髄》は初期社会主義の記念碑的著作となった。10月日露開戦論に転じた《万朝報》を堺利彦とともに退社,11月平民社を興して週刊《平民新聞》を創刊し,戦争反対の立場を鮮明にして帝国主義戦争の本質をついた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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