個人に対して全体としての社会や集団が、それを構成する個人には還元できない、個人を超えた一つの実在で、個人は社会という生きた全体のなかでのみ存在すると考え、個人に対する社会の実在上の先行性を説く社会観の総称。社会名目論の反対概念。両者の対立は思想史とともに古く、中世哲学において普遍と個別の関係について、普遍の優先的存在を説く実在論と個別の先在を説く名目論の対立以来、社会有機体説と社会契約説などの対立に示される。社会学の領域では、個人意識に還元されない、むしろそれに超越的で個人意識に対して拘束的とされるデュルケームの集合表象説や、集合体には個人心理に還元できない実体的な心性があるとするマクドゥーガルの集団心説や、社会を、人間の本性そのものをつくりだす心的現実とみなすクーリーの見解などがその例である。
問題は個人と社会との関係であるが、この問題を虚偽問題とするのがギュルビッチである。彼によれば、社会と個人を相互に外在的で相いれない実在と考えるのは正しい問題のたて方ではない。個人も社会も、いずれも単独では存在しえない不可分な生活の要件なのであって、両者は相互に内在する。これがギュルビッチの主張である。
[古賀英三郎]
『E・デュルケム著、宮島喬訳『社会学的方法の基準』(岩波文庫)』▽『G・ギュルヴィッチ著、寿里茂訳『現代社会学大系11 社会学の現代的課題』(1970・青木書店)』
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…また,〈社会〉には,個人の外側にあって,個人の行動の自由を束縛する全体的な制度だとするニュアンスがある。そこで欧米では,相対立する社会と個人のどちらが真に実在する存在であるかについて見解が分かれ,社会実在論(社会は個人をこえた一つの実在だとする考え)と社会名目論(社会それ自体の実存を認めず,個人の相互関係に還元する考え)という形で争われてきた。だが世間の場合は,それは各人にとって外在する拘束的な機構ではない。…
※「社会実在論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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